- 課題
- 「100年続く企業」を見据えるにあたって、採用ターゲットを明確にする必要があった
- 社名は認知されているが、業務内容の認知や理解が不足していた
- 事業などに対してネガティブな印象を抱かれることがあり、それが内定辞退に繋がることもあった
- 導入の決め手
- 現場社員だけでなく経営陣のレベルであるべき姿を共有できていた
- 長期目線で同じゴールが見えているため、最良の打ち手を提案いただけると思った
- 得られた成果
- 入社を検討した学生がどのような点に魅力を感じたか言語化できた
- 採用する中でボトルネックとなっている部分がわかった
「愛がいちばん。」のCMでおなじみのアイフルが今、企業像を大きく変えようとしています。「IT企業への変革を遂げ、100年続く企業」を目指し、新たな成長戦略を策定。その実現に向けて、新卒採用でも変革に挑んでいます。
同社の変革を人材起点から推進するため、ワンキャリアでは特別チームを立ち上げてオーダーメイドで支援を行っています。本プロジェクトはどのように始まり、どこを目指しているのか。アイフル採用課課長の山岸貴子さんと、ワンキャリア総合企画室の鈴木維にインタビューしました。

「100年続く企業」に向けて、採用も変革期に
――まずは、アイフルがこのタイミングで新卒採用を大きく変えようとしている理由を教えていただけますか?
山岸:前提として、当社は成長戦略として「IT企業への変革を遂げ、100年続く企業」を目指しています。2017年で創業50年を迎えましたが、次の50年、さらにその先も社会から支持され続けるために、変革が必要だと考えています。
――具体的に教えてください。
山岸:新たな成長ステージに向けた3つの成長戦略があります。1つ目は、主力の金融事業で成長と効率化を進め、グループの利益水準を引き上げること。2つ目は、そこで生まれた資金を新たな事業へのチャレンジに投資すること。3本目は、システム・UI/UXの内製化でお客さまのニーズに柔軟にスピーディーに対応すること。
これらの成長戦略を実現する手段が、IT企業への変革であり、それ自体が目的ではありません。

――成長戦略を実現させるためにも、新たな人材が必要なのですね。
山岸:そうですね。まず、アイフルには「For Colorful Life. 自分の色が輝く社会に」というビジョンがあります。従業員一人一人が自分の色を輝かせることで、会社の成長を支える存在になると信じています。だからこそ、人材に対して教育という投資をする、人の可能性を信じて伸ばすことを大事にしています。
具体的には、既存社員へのプログラミング教育などによるリスキリング、中途採用、新卒採用の3つを軸としています。この中で、新卒採用は将来のアイフルを支える幹部候補が育つことを目指し、力を入れています。
採用ターゲットの明確化が喫緊の課題に
――これまでの新卒採用はどのように取り組まれていたのですか?
山岸:一般的な新卒採用で行われていることは、一通りやってきました。ナビ媒体への掲載、スカウト、会社説明会、インターンシップなどです。「愛がいちばん。」のCMにより社名は一定の認知度があると思っていたのですが、課題を突き付けられる出来事がありました。
――どのようなことでしょうか?
山岸:とある大学で200人くらいの学生の方を対象に会社説明会をしたときです。説明会後のアンケートに「社名は知っていたけど、何をしている会社か知りませんでした」というコメントがありました。
学生にとってカードローンは身近ではなく、就職先として意識している人は限定的です。CMを流すだけでは、自分の未来を預ける上での情報が圧倒的に不足したのです。
また、保護者世代にとってカードローンはネガティブなイメージがあり、就職を反対されて内定辞退となるケースもありました。
――足元の課題が浮き彫りになった出来事なのですね。
山岸:加えて、今後の変革を見据えたとき「採用ターゲットの明確化」という課題もありました。
これまで結果として多くの良い仲間に恵まれましたが、今後は「100年続く企業」を見据えて更なる挑戦が求められます。だからこそ、このタイミングで採用ターゲットを改めて言語化する必要がありました。
当社としても仮説は持っていましたが、明確化はできていませんでした。また、戦い方が全く分からない、自分たちだけでは太刀打ちできないという限界も感じていました。

――どういうことでしょうか?
山岸: 従来はナビ媒体の活用が主で、受動的な母集団の形成をしていて、競合は金融業界の他社でした。そのため、アイフルへの企業理解は一定程度あったと感じました。
ところがスカウトメインに切り替えたことで、母集団の属性が変わりました。アイフルへの志望度は高くない学生が多く、競合には大手IT企業もいました。
ワンキャリア経営陣もコミットし、採用戦略から伴走する
――ターゲットとする学生の幅を広げる中で、従来の知見では通用しない部分も出てきたのですね。
山岸:何年もかけて自前で試行錯誤することもできますが、将来の幹部候補の確保が2~3年遅れる可能性もあります。これは喫緊の課題だとして、ワンキャリアさんに伴走をお願いしました。
――ワンキャリアは、今回のプロジェクトにどのように取り組んでいるのでしょうか?
鈴木:以前から課題をお伺いしており、ワンキャリアとしても「人材起点で経営を変革する」お手伝いができないかと考えました。社内に特別チームを立ち上げ、伴走支援をご提案しました。
――既存商品を提案する選択肢もあったかと思いますが、そこまで踏み込むのはなぜですか?
鈴木:アイフルさまの採用におけるポテンシャルが非常に高く、もっと引き上げられると思ったからです。選考に進んだり入社したりした方には魅力は伝わっていますが、知らない学生が多くいます。より早いタイミングで組織・事業の魅力を届けるなど、点ではなく面で、採用戦略全体でご一緒するのが最適だと考えました。
――採用を抜本的に変えるからこそ、ゼロから一緒につくる。こういった提案は珍しいのではないでしょうか?
山岸:他社さんからも「壁打ちしながら採用のフローを見直しましょう」と提案いただくことはありましたが、ワンキャリアさんが他社さんと違うのは、現場社員だけでなく経営陣のレベルでも大きな構想、あるべき姿を共有できていることです。実現へ最良の打ち手を考えていただけると思いました。100年続く企業を目指す上で、長期目線で同じゴールが見えているのは心強いです。
鈴木:今回のプロジェクトには、ワンキャリア代表の宮下も「アイフルさまの採用を絶対に成功させるんだ」という強い思いでコミットしています。
具体的な施策や提案は私たち現場メンバーが実行しますが、宮下も経営者視点からフィードバックを行っています。また、アイフル代表取締役社長の福田光秀さまには、宮下からプロジェクトの状況を適宜ご報告し、採用パートナーとしての関係性を深められていると感じています。

徹底したリサーチで、学生のイメージを浮き彫りに
――ワンキャリアとの取り組みの具体像を教えてください
鈴木:まず、戦略づくりのフェーズと実装のフェーズに分け、戦略策定から本腰を入れることにしました。ワンキャリアが強みを持つユーザー起点でアイフルさまを見たときに、あるべき姿と現状の差分はどうなのか。マーケットリサーチを徹底しました。
こうしたリサーチは外部の調査機関に委託する企業もありますが、ワンキャリアは社内のマーケターが担当しました。当社には大手企業でマーケティングを経験したメンバーがおり、新卒マーケットにも精通しています。その強みを生かし、戦略策定に向けて一気通貫でできたのは大きいです。
――実際にはどのようなリサーチをしましたか?
鈴木:大きく分けて3種類あります。まずは母集団分析で、どの大学の学生がどのタイミングで選考に入り、どんな結果になったのか。これをアイフルグループさまのあらゆるデータから明らかにしました。
次はウェブアンケート形式の定量調査で、300人以上の学生からイメージを聴取しました。この2つの調査で、傾向や競合との差分、仮説としての課題は見えてきました。
――さらに深く掘り下げるのが3つ目の調査ですか?
鈴木:そうです。インタビュー形式でアイフルさまから内々定を得た人や、金融志望でアイフルさまの選考を受けていない人ら10人以上から長時間ヒアリングしました。前段階の2つの調査から導き出された仮説を基に、会社へのイメージや意識が変わるタイミング、重視する魅力、どう打ち出せば期待が持てるかなどを、壁打ちしながら浮き彫りにしていきました。

調査結果をまとめたレポート(抜粋)
「変革期のアイフルで成長できる」見えてきた未来像
――今回の調査で、どのようなことが分かりましたか?
鈴木:あらゆることを数値化・言語化できました。例えば、選考を受けて入社を検討した学生さんにとって、人(社員)の魅力は非常に大きい。一方で、業界自体に抱くネガティブイメージは強いものでした。また「CMすら知らない」という人も想定より多かったです。
――採用ファネルの最初の部分でボトルネックがあったのですね。
山岸:業界イメージの悪さは想定内でしたが、考えさせられたのは、業界に対して「成長できる環境ではない」と捉えている学生の方がいた点です。「アイフル=カードローン」という限定的なイメージが大きなマイナスなのだと気付けました。
実際には、クレジットカードやSES(システムエンジニアリングサービス)といったカードローン以外の事業もグループ内にあります。今後もM&Aで新しい分野に展開していくことを知ってもらえれば、変革期だからこそ成長できると感じてもらえるのでは……。そんな未来像が調査から見えてきました。
――今後の取り組みについて教えてください。
鈴木:まずは26年卒や27年卒の採用活動にインパクトさせるべく、改めて課題に向き合って戦略を考える。これが直近、100%の力で達成すべきマイルストーンです。その上で、採用や人材を起点に経営にインパクトさせられる、企業成長につなげるという大きな目標を掲げています。
山岸:思いが一緒だと分かり、とても心強いです。2~3年後はよりよい採用活動ができそうな手応えがあるので、じっくり、私たちも楽しみながらやっていきたいです。
私はあと10年ほどで定年ですが、それまでに何を残せるのかと考えてきました。今では「10年後に幹部候補が育っているように」と思い描いています。ワンキャリアさんとの取り組みを通じて実現させていきたいですね。
