- 課題
- 社内制度の関係で採用担当が定期的に変わり、採用ノウハウが蓄積されていなかった
- 従来通りの採用を行うのではなく、自社に興味を持ってくれる学生に対して直接アプローチをしたかった
- 採用したい人材にターゲットを絞って自社の魅力を訴求できていなかった
- 導入の決め手
- 社内関係者から急成長メディアであると紹介を受けた
- 関わる学生からONE CAREERを利用していると聞く機会が多かった
- 得られた成果
- 採用データからの調査で、消費財メーカーの学生の志望理由が把握できた
- 業界特化のオンラインイベントでターゲット学生層に会えた
- ターゲット層を惹きつけやすい記事の方向性や打ち出し方のアドバイスを得られた
化粧品・健康食品の研究開発、製造および販売を手がける株式会社ファンケル。創業者の池森賢二さんが化粧品販売を個人創業したところから歴史がはじまり、現在は1200(グループ連結)人を超える従業員を抱えるほどの成長を遂げています。
人材採用戦略やONE CAREERのサービス活用について、同社の人事部採用グループで課長を務める小田島真従さんと佐藤諒さん、同社の採用戦略の構築をサポートしたワンキャリアの総合企画・鈴木維にお話を聞きました。
「もっと何かできるはず」という経営理念
――まず貴社の紹介をお願いします。

小田島:ファンケルは1980年に創業、来年45年目を迎えます。化粧品と健康食品が2大事業のため、化粧品会社やサプリメント会社だとイメージされることが多くありますが、実ははじまりは“世の中の不安や不便などの「不」を解消したい”という思いに根ざしています。化粧品やサプリメントも、世の課題を解決していくための手段だったと言えます。
佐藤:不の解消については美と健康という領域で、現在も様々な新規事業を通して注力しています。例えば、リハビリテーションの現場では、身体機能を改善するにはどれほどの強度で行えばいいかがわかりにくいという課題があります。私たちとしては“体力の見える化”によって個々に合わせた運動強度を示すことで、リハビリ現場やスポーツにおけるパフォーマンス向上に役立つような、効果が測定できる機器や仕組み作りを行っているところです。
――ファンケルで働く社員の特徴はありますか。
佐藤:まず企業風土として、お客さまを大事にするという強い思いが根付いています。また、「もっと何かできるはず」という経営理念があるため、丁寧にお客さまの声に耳を傾け、現状に満足することのない向上心と熱意を持った社員が多く在籍しています。社員は柔和な人も多く、働きやすく風通しのいい企業だと考えています。
――ONE CAREERを知ったきっかけについて教えてください。
小田島:出会いは約1年前のことでした。そもそも採用活動とは、経営戦略を実行する人材を採用することであると考えていました。そのため当社としては、既存事業である化粧品と健康食品事業の成長に寄与できる人材、新しい課題を自ら見つけて価値を創造できる人材が必要となります。
当時は新規事業への注力もあって後者の人材をより強く求められるタイミングで、学生からONE CAREERという名前をよく聞くようになった時期でもありました。その上、ONE CAREERと口にするのは大学1、2年生の学生たち。興味を持ち、どのような企業なのかと知るためにセミナーに参加したこともありました。
そして、決定的なきっかけとなったのは、当社の社外取締役から「面白い会社がある」と紹介されたことです。実は採用に関してではなく、急成長企業としての紹介でしたが、当時は採用活動でも社名をよく聞くようになった時期と重なっていたため、一度じっくりと話を聞いてみたいととつながりが生まれました。
佐藤:実際に話を聞いてみると、参加したセミナー以上の深い話ができましたね。
当時のファンケルは、新卒採用と中途採用の割合が半々であったものの、新卒採用で理念に共感して実行に移せる優秀な人材をより採用したいという人事方針がありました。
一方、採用に関われる社員数は限られ、様々な業務経験を積ませるジョブローテーション制度もあるため、採用担当の異動によりなかなか採用ノウハウが蓄積されずに、短期的な採用方針を立てざるをえなかった実情もありました。ONE CAREERを知ったのは、客観的にデータを用いた中長期的な採用戦略への移行を模索していたタイミングであったこともあり、サービス導入を決めました。
――ONE CAREER側から当時を振り返ってもらえますか。
鈴木:ファンケルさまと弊社の間には、それまでに大きなお取引や協業の機会はありませんでした。ただ、お話を通してファンケルさまの大きなポテンシャルを知ることができ、弊社がこれまでに培ってきた知見を提供することで採用の一助になれる確信はありました。
採用戦略を変えた2つの提案

――サービス利用開始時に採用における課題はありましたか。
佐藤:私は採用を担当して3年目になりますが、1、2年目はとにかく合同説明会で多くの学生に会い、ファンケルの魅力を伝えて、インターンシップや本選考のエントリーに向けて背中を押すことがメイン業務でした。
当時から、挑戦・実行ができる、チームワークがある人材といった、新卒採用で求める人物像を掲げていましたが、正直に言えばエントリーした学生から選ぶ体制だったところは否めませんでした。
小田島:確かに、当時の私たちの採用手法は、とにかく多くの学生に知ってもらうために自社をPRしていくという方針でした。不特定多数の学生に対して「ファンケルはいい会社だから是非入社してください」と呼びかけることが第一でした。
しかし、本当にこれでいいんだろうかという課題感も抱いていました。リソースに限界がある手法な上、私たちが本当に採用したい人材にアプローチができているのかという疑問もありましたね。
就活支援のサービスの多くは、出展イベントや企業情報の掲載サイトなどを提案するものがほとんどです。一方で、私たちのポイントは、経営戦略と照らし合わせてアプローチすべき学生層を絞り、そのターゲットとなる学生といかに接点を持って自社の魅力を伝え、採用につなげられるかです。
そして、ONE CAREERのサービスはそれらの課題解決に向けた調査から学生とのコミュニケーション設計に至るまで、ともに伴走してくれる期待感がありました。
鈴木:当時を振り返ると、私たちは2つのご提案をさせていただきました。
1つ目の提案は3種類からなる調査です。まず、現状の採用データを共有いただいて、学群別の歩留まり率や大学別の自社との相性などの多面的な分析。次に定量調査として学生ユーザー向けにアンケートを実施して、ファンケルさまが学生からいかに認知や理解されているかなどを定量的に分析しました。そして、最後に定性調査として、定量調査までに得た仮説をもとに、ターゲット層や内定承諾者、内定辞退者の学生にファンケルさまや他社の印象などをインタビューしました。この3つの調査はファンケルさまの企業としてのポジショニングをしっかり把握することが目的です。
2つ目の提案は、今後の戦略についてです。具体的には、調査データから浮かび上がった採用すべき人材像と、その採用戦略をご提案させていただきました。
調査を振り返ると、ファンケルさまはCMの効果もあって競合他社と同様に高い認知度を誇り、学生も就活以前から社名を認知していることがわかりました。しかし、内定者や今後のターゲット層の学生はファンケルさまの商品が好きだからといって志望したわけではないとも判明しています。多くは化粧品業界を志望し、そこから社員や風土に惹かれて入社を決めたと、調査データでは明らかになりました。
一方、競合他社に入社を決めた学生は、「マーケティングスキルが身につく」「グローバルな環境で働ける」という要素を重視しています。
私たちとしてはこれらのデータを勘案し、ファンケルさまの経営方針と照らし合わせた上で、今後は他社への入社を決めたような、上昇志向を持つ学生とも接点を持つ必要性を提案させていただきました。
――調査結果を聞いて、初めて認識したこともあったのでしょうか。
小田島:社員を魅力に感じたとは内定者から聞いていたため、データで裏付けされたと言えますね。
一方で、消費財メーカーを志望する学生は、自身の好きな商品に携わりたいから入社を決めていることは新たな気づきになりました。「確かにそういう考えもあるな」と。当社のブランドのメインユーザーは学生よりも高い年齢層になるため、若年層に商品が浸透していない課題が採用にも影響していると感じました。
また、専門スキルを高めたい学生が他社を選んでいる点では、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に切り替える企業が増えたこと以外にも、メンバーシップ型雇用でいかにキャリアを積み上げていくかを伝えきれていなかったのではないかという気づきも得られました。
佐藤:採用現場の感覚として、弊社の商品が大好きで、その商品を作りたい、関わりたいという声は確かにそこまで聞いたことがなかったため、調査結果は正直腑に落ちるものがありました。
専門スキルを重視する学生が他社に入社していることも、これまでの採用手法ではメンバーシップ型雇用のキャリア形成について訴求しきれていなかったと改めて思い知らされましたね。
採用戦略において実現した選択と集中

――課題解決のため、どのような取り組みを実施しましたか。
鈴木:実際に3つの施策をご提案しました。1つ目は「変えられるところから変えていく」ということです。例えば内定を辞退して他社に入社する学生の多くは、よりよい待遇やジョブ型雇用を求めています。そのため、調査データから年収や福利厚生、制度などにおいて、学生からの期待値が他社とどれほど離れていているかを把握し、調整できる部分があるのであれば変えていくことを提案させていただきました。
2つ目は、採用戦略に合致するメディア露出やイベント出展を必要量行うということです。現状は化粧品業界を志望してファンケルさまを認知するパターンが最も多いため、そこへのリーチをより徹底する施策になります。一例として、ONE CAREERとして業界トップの企業が出展する場を作り、そこにご参加いただいたこともありました。
最後の3つ目は前述した、新たなターゲットへのアプローチになります。ターゲットを完全に変えるのではなく、以前から採用できていた層に加え、経営方針とのつながりや調査結果で明らかになった上昇志向を持つ学生層にアプローチするというご提案になります。
佐藤:実際にご提案いただいた化粧品業界のイベントに出展したところ、参加する学生層に違いがあると感じました。
アンケートを調べたところ、参加した学生は私たちのターゲット層と合致していた上、成長環境や化粧品業界での位置づけなど、私たちが伝えたいことも感じ取ってもらえ、かなりの手ごたえが得られました。また、ONE CAREERの媒体での露出についても、ターゲット層の惹きつけやすい記事の方向性や打ち出し方、見出しなどのアドバイスを受けられましたね。
小田島:学生によるレビューや評判の蓄積があるところは、ONE CAREERの強みのひとつだと感じています。露出量を増やすことにとどまらず、私たちのターゲット層を惹きつけるために、強みを活かした手厚いフォローがあったのもありがたかったですね。
鈴木:ワーディングひとつとっても惹きつけられるかどうかが変わるため、ご出演いただいた動画内で投影される資料の一言一句まで確認し、ご提案させていただくこともありました。
当時は、ファンケルさまの表現と学生が興味を持ちやすい表現においての乖離があり、事業の領域や規模、思いなども資料で伝えきれていない印象があったため、その改善点を説明いたしました。また、ジョブ型雇用で経験できるプロフェッショナル領域は、メンバーシップ型雇用であれば複数網羅できるといった、メンバーシップ型雇用でキャリア支援をする理由をより打ち出すこともご提案させていただきました。
――今後の採用戦略についても聞かせてください。
小田島:ターゲット層と接点を持ち、学生に響くコミュニケーションを取ることで求める人材の入社を促したいと考えています。
ONE CAREERのサービスの利用は今年度途中からで、すでに2026年度卒の学生の採用が始まっているタイミングでした。今年度は可能な限りの変更を加える形でしたが、2027年度卒の学生に対しては、早期化する就職活動にしっかりと照準を合わせて、認知を上げていく方針を考えています。
実際に、これまでは早期選考と一般選考の二軸で採用活動を進めていましたが、早期から就職活動をはじめる優秀なターゲット層へのアプローチのため、早期選考の一本化を決断しています。
佐藤:ONE CAREERの調査を経て、上昇志向とホワイト志向というターゲット層のペルソナも見えてきています。今後はターゲット層を明確に打ち出してから初めての選考になるため、来年4月にしっかりと動き出せるよう、よりペルソナを具体化させていきたいですね。
鈴木:補足になりますが、ターゲットとなる上昇志向とホワイト志向の学生も、就職活動中に志向が変わらないかと言えば、そうではありません。定量データとして、上昇志向は就活を経て少なくなり、ホワイト志向は反対に増加していくことが判明しています。
その理由として、上昇志向の学生は抽象的に「自分は何者かになれる」と信じて就活を始めることがありますが、インターンシップや選考で良くも悪くも揉まれていき、自分が働くべき環境やフィールドはどこかと具体化させていき、気づいたらホワイト志向になることがあります。
これまでホワイト志向の学生を採用してきたファンケルさまも、今後はただ上昇志向の学生を採用するのではなく、早期に学生と接点を持つことで、いずれホワイト志向になり得る学生層にも採用の幅を広げられると言えそうです。
さらに採用の早期一本化についても、最初に聞いた時は驚くとともに、素晴らしいと感じました。採用が早期化している流れの中で、最も効率的かつ本質的な選択と言えるでしょう。思い切った決断によって、今後明らかになるであろうメリットとデメリットも、長期戦略に生かせるはずです。
――最後に印象に残った取り組みやONE CAREERへの期待があれば聞かせてください。
佐藤:今回の取り組みを通じて、個人的にはメッセージの伝え方について改めて学びましたね。また、「やるべきこと」と「やらなくていいこと」も見えてきました。
現在は明確なターゲット層へのアプローチに注力する一方、合同説明会への出展などは絞りつつあり、過去と比較すれば最も露出が少なくなっているとも言えます。ただ、完全に露出しないわけでもありません。出展すべきイベントにおいては、学生にメッセージを明確に伝えることを重視しています。
もちろん、これらは単年での施策ではなく、採用ノウハウの蓄積や中長期的な採用につなげる狙いがあるため、今後も続けたい取り組みですね。
小田島:確かに、採用戦略ではようやく選択と集中ができはじめたと感じています。これまでは「学生が求めているから」と、もっともらしい理由で様々な施策に取り組んできましたが、今回は実際に成果につながるかどうかという観点で提案いただいたため、何をやるかだけでなく、何をやめるかについても戦略的に行えていると考えています。
新たな採用戦略をスタートから行うのは、2027年度卒の学生向けの施策からです。ONE CAREERには2027年度卒に対して理想の戦略を実行するためにも、今後もぜひご協力をお願いしたいですね。

