目次
「通年採用の導入は難しい?」「通年採用のメリットやデメリットは?」など疑問に思う採用担当者必見! 本記事では、通年採用が難しいといわれる理由や通年採用のメリット・デメリットについて解説します。また、通年採用の実施方法や成功のポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
通年採用とは? 概要や一括採用との違い、通年採用が進んでいる背景を解説
近年、企業の採用活動は多様化し、「通年採用」を導入する企業が増えています。ここでは、通年採用の概要や一括採用との違い、通年採用が拡大している背景について解説します。
通年採用の概要
通年採用とは、特定の時期に限らず、企業が年間を通じて採用活動を行う方式を指します。中途採用では一般的な手法ですが、ここ数年は新卒採用にも広がりを見せています。
従来の日本型雇用では、3月広報・6月選考という一括採用が主流でしたが、社会の変化により、柔軟な採用形態として通年採用が注目されています。
学生は自身のペースで企業選びができ、企業側も優秀な人材を逃さず採用できるメリットがあります。
通年採用を実施する企業の割合
新卒採用において通年採用を導入する企業は、徐々に増加傾向にあります。日本経済団体連合会(経団連)の就活ルールの見直しや人材獲得競争の激化により、柔軟な採用活動の必要性が高まっているためです。
特に大手企業やグローバル展開を進める企業を中心に、従来の一括採用と併用するかたちで通年採用を導入するケースも見られます。今後は、IT系やベンチャー企業にとどまらず、幅広い業種で導入が進むと予想されています。
通年採用と一括採用の違い
通年採用と一括採用では、応募のタイミングや対象となる人材、内定後のスケジュールなどが大きく異なります。それぞれの特徴や違いを具体的に見ていきましょう。
募集期間
通年採用と一括採用の最大の違いの1つが、募集期間の柔軟性です。
新卒一括採用では、公募開始が3月、選考が6月に集中し、10月には内定が出そろうという明確なスケジュールが一般的です。
一方、通年採用ではそのような決まった期間がなく、企業側が自社の都合や人材ニーズに応じて、年間を通じて自由に募集・選考を行うことができます。これにより、採用のチャンスが広がると同時に、採用計画の調整も柔軟に行えるという利点があります。
募集対象
一括採用が主に「卒業予定の新卒学生」に限定されているのに対し、通年採用では採用対象が非常に幅広いのが特徴です。
既卒者や第二新卒、留学生、さらには海外大学を卒業した人材も対象に含まれます。このように、多様なバックグラウンドを持つ人材を受け入れられることは、グローバル化や多様性を重視する企業にとって大きなメリットです。
企業は必要なタイミングで最適な人材を確保しやすくなり、学生側も卒業後の進路に柔軟な選択肢を持てるようになります。
入社時期
従来の新卒一括採用では、多くの学生が4月に一斉入社し、同じ研修を受けながら社会人生活をスタートさせるのが一般的でした。
しかし、通年採用では採用のタイミングに応じて、夏・秋・冬など柔軟に入社時期を設定することが可能です。これにより、留学や資格取得など個人の都合を尊重した入社が可能になり、学生にとっても企業にとっても自由度の高い働き方が実現できます。
企業が通年採用へ切り替える背景
近年、多くの企業が一括採用から通年採用へと移行しています。その背景には、社会構造や採用環境の変化があります。具体的にどのような要因があるのか見ていきましょう。
人手不足の深刻化
少子高齢化が進行する日本では、労働力人口の減少が大きな社会課題となっており、多くの企業が人手不足に直面しています。
特に若手人材の確保は年々難しくなっており、新卒一括採用だけでは十分な人材を確保できないケースが増えています。こうした状況下で、年間を通じて柔軟に人材を募集できる通年採用は、企業にとって貴重な選択肢となっています。
事業活動のグローバル化
企業の国際展開が進むなかで、グローバル市場に対応できる人材の確保がより重要になっています。
語学力や専門スキルを持つ留学生や海外大学出身者など、多様なバックグラウンドを持つ人材の獲得が求められる時代において、一括採用では対応が難しいケースもあります。
通年採用は、そうした多様な人材層に対して柔軟にアプローチできる点で有効です。採用の間口を広げることで、より実践的なスキルを持つ即戦力人材を取り込むチャンスが生まれます。
採用選考のルール変更
従来は、経団連が定めた就活ルールにより、企業は採用広報の開始時期や選考開始時期を守る必要がありましたが、こうしたルールが事実上撤廃されたことで、採用の自由度が高まりました。
その結果、企業は自社のタイミングに合わせて独自の採用活動を展開しやすくなり、通年採用の導入が進んでいます。画一的なスケジュールにとらわれないことで、企業は競争優位性を高めやすくなり、より柔軟かつ戦略的な採用活動が可能となっています。
通年採用が難しいといわれる理由
通年採用は柔軟な反面、運用面でのハードルも少なくありません。ここでは、なぜ通年採用が「難しい」とされるのか、その具体的な理由について解説します。
採用コストがかかる
通年採用は採用活動の期間が長期化するため、費用面での負担が増す傾向があります。求人広告の掲載期間が延びたり、説明会や面接の実施回数が増えたりすることで、運用コストが積み重なります。
また、継続的な人材対応のために、採用担当の増員が必要になるケースもあります。こうした背景から、通年採用を導入する際には、コストと成果のバランスを見極めた上で採用戦略を立てることが重要です。
採用担当者の負担が増加する
通年採用は応募のタイミングが分散するため、採用担当者が常に選考対応に追われる状態です。
一括採用では一度のスケジュールで大量の学生を選考できますが、通年採用では個別対応が中心となるため、スケジュール管理や連絡業務にかかる負担が大きくなります。
さらに、志望動機の確認や学生の見極めなど、細やかな対応が求められる場面も増えるため、業務量の増加は避けられません。体制強化や業務分担が課題となるでしょう。
内定者ごとに研修や教育を行う必要がある
通年採用では入社時期がバラバラになるため、新入社員を一括で研修することが難しくなります。
従来の4月一括入社であれば、同時期に多くの社員へ効率的に教育を施せますが、通年採用では都度、個別対応が必要です。そのため、研修の回数や運営体制が複雑化し、現場や人事部門にかかる工数が増加します。
また、社内でのフォロー体制が整っていない場合、育成の質がばらつくリスクも考えられ、教育制度の見直しが求められます。
通年採用のメリット
通年採用には、企業・学生それぞれにとって多くの利点があります。ここでは、双方の立場から見た通年採用の主なメリットについて詳しく解説します。
企業側のメリット
企業にとって通年採用は、より幅広い人材との出会いや柔軟な採用計画の実現といった利点があります。どのような点がプラスに働くのか見ていきましょう。
一括採用では出会いにくい学生と接触機会を持てる
一括採用では、学生の多くが限られた期間に集中して就職活動を行うため、企業側も決まった時期に絞って対応する必要があります。そのため、自社にマッチする可能性のある学生と接点を持てないまま採用活動が終了することも少なくありません。
一方、通年採用では、採用のタイミングを柔軟に設定できるため、学生側の行動パターンに左右されず、多様な志向や背景を持つ学生と出会えるチャンスが増えます。結果として、より広い視野で人材発掘が可能です。
海外の大学生や留学生、既卒者の採用に対応できる
通年採用は、特定の卒業時期に限定されず、幅広い層の学生を対象にできる点が大きな特徴です。たとえば、海外の大学に通う学生は日本の一括採用のスケジュールと合わないことが多く、これまで採用の機会を逃しやすい状況にありました。
また、既卒者や留学生といった多様な人材層にもアプローチできるため、グローバル化や多様性を重視する企業にとっては大きなメリットです。タイミングに縛られない採用手法は、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材の獲得につながるでしょう。
慎重に選考を進めることで、ミスマッチを防げる
通年採用では、採用活動の締め切りや選考日程に追われることがないため、学生一人一人に対して丁寧に対応できます。
その結果、企業は時間をかけて対話を重ね、学生の価値観やスキル、自社との相性などを総合的に判断することが可能です。結果として定着率が高まり、育成にかかるコストも抑えられる好循環が生まれます。
内定辞退が発生しても臨機応変に対応できる
新卒一括採用では、選考時期が限られているため、一度内定辞退が発生するとその年の採用計画に大きな影響を及ぼすことがあります。
一方、通年採用では、年間を通して募集や選考ができるため、仮に内定辞退が出てもすぐに次の候補者を選考し、空いたポジションを補充することが可能です。
採用活動を柔軟に続けられることで、機会損失を防ぎながらも着実に人材を確保できるという点は、企業にとって大きな安心材料となるでしょう。
学生側のメリット
通年採用は学生にとっても、自分のペースで就職活動に取り組めるなど多くの恩恵があります。どのようなメリットがあるのか整理して紹介します。
応募できる企業の数が増える
通年採用では選考スケジュールが分散されているため、学生は時期をずらして複数の企業に応募することが可能です。
一括採用では、説明会や選考のスケジュールが重なり、志望していた企業に応募できなかったというケースも珍しくありません。
しかし通年採用であれば、日程調整がしやすく、選択肢を狭めずに就職活動を進められます。結果として、自分に合った企業との出会いの可能性が広がる点が、大きな魅力といえるでしょう。
精神的に余裕が生まれる
一括採用では短期間に複数の選考をこなさなければならず、多くの学生がスケジュール管理や準備に追われ、精神的にも大きなプレッシャーを感じがちです。
一方、通年採用ではスケジュールにゆとりがあるため、自分のペースで就職活動に取り組めるのが特徴です。
体調不良や学業、課外活動の都合で一時的に就活を中断しても、再チャレンジがしやすい環境が整っているため、気持ちに余裕を持って向き合えるという安心感があります。
企業分析をじっくり行い選ぶことができる
通年採用では、エントリーから選考までの時間的な制約が少ないため、学生は一社一社の企業について時間をかけて調べ、自分に本当に合った企業を見極めやすくなります。
一括採用のように、限られた時間内で複数の企業の選考を同時進行する必要がないため、焦って意思決定をすることも減ります。その結果、企業理解が深まり、入社後のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。
自分の好きなことに集中できる
通年採用はスケジュールに融通が利くため、学業や部活動、留学、資格取得など、学生生活でやりたいことを優先しながら就職活動を行えます。
一括採用のように、春先から一斉に就活モードに切り替える必要がないため、自分の将来に必要なスキルや経験を積む時間を確保できます。
こうした柔軟なスタイルは、やりたいことにじっくり向き合い、自信を持って社会に出る準備をする上でも、非常に大きな意味を持ちます。
通年採用のデメリット
通年採用にはメリットがある一方で、企業にも学生にもデメリットが存在します。ここでは、それぞれが抱えやすい課題について詳しく解説します。
企業側のデメリット
企業が通年採用を進める際には、運営や管理面での負担増といったデメリットも生じます。具体的にどのような点に注意が必要なのか見ていきましょう。
採用が長期化し、採用担当者の負担が増える
通年採用では、一年を通じて採用活動を継続する必要があるため、担当者の業務量が大幅に増加します。一括採用のように短期間で集中的に終えることができず、個別対応が求められる分、スケジュール管理や進捗(しんちょく)管理にも時間を割かれます。
特に採用を他業務と兼任している担当者にとっては負担が重くなりやすく、業務過多によるミスや対応の質の低下にも注意が必要です。人員や体制の見直しを行わなければ、採用活動自体が非効率になるおそれがあります。
教育や研修が効率的に行えない
通年採用では入社時期がばらつくため、従来のように一斉研修を行うのが難しくなります。結果として、入社するたびに個別研修を実施する必要があり、教育担当者のリソースや育成コストが増加します。
また、研修内容が時期ごとにばらついてしまうことで、社員同士の習熟度に差が出る可能性もあります。特に新卒者の場合は、同期とのつながりや一体感が育ちにくくなるなど、組織全体への影響も無視できません。
体制構築や広報などにコストがかかる
通年採用を成功させるには、従来よりも多くの情報発信や広報活動が必要です。採用サイトの運用やSNSでの情報発信を継続的に行うほか、説明会やイベントへの出展回数も増えやすく、広報にかかる予算がかさむ傾向もあります。
また、入社時期ごとの受け入れ体制や評価基準を整えるなど、社内制度の柔軟性も求められます。こうした取り組みに対応するには、人材・時間・費用の面での十分な投資が必要となり、導入企業にとっては大きな負担となることもあります。
一括採用の企業の影響を受ける
通年採用を導入していても、多くの企業が一括採用を継続している現状では、その影響を受けざるを得ません。学生の多くが一括採用の流れに乗って就職活動を進めるため、通年採用を行っている企業の存在が後回しにされることもあります。
採用活動を強化すべき時期を逃すと、優秀な人材の確保が難しくなるリスクもあります。さらに、学生から「いつでも応募できる企業」と見なされ、志望度が低いまま選考を受けるケースもあるため、対応には工夫が必要です。
滑り止め扱いにされることも
通年採用は応募時期に自由度がある反面、学生側からは「本命がダメだった場合に応募する企業」として受け止められてしまう可能性があります。
一括採用の結果を待ってから通年採用の企業に応募するケースもあり、企業に対する志望度が低いまま選考に臨む学生が一定数いることは否めません。
その結果、内定辞退が多発するリスクがあり、採用の効率が下がる懸念もあります。こうした状況を防ぐためには、早期からの魅力発信と候補者との継続的な接点づくりが不可欠です。
知名度の低い企業にとっては不利になることも
一括採用では就活解禁のタイミングで多くの学生が一斉に企業研究を行うため、知名度が低い企業でも比較的目に留まりやすい機会があります。
しかし、通年採用は情報発信のタイミングが分散しているため、認知度の低い企業は学生に見つけてもらうハードルが高くなりがちです。特に受動的な学生には届きにくく、学生が集まりにくいという課題も生じます。
継続的かつ戦略的な広報活動を通じて、企業の存在や魅力を根気強く伝えていく必要があります。
学生側のデメリット
学生にとっても、情報の少なさやスケジュール管理の難しさといった課題があります。どのような問題があるのか順に確認していきましょう。
採用基準が高くなる可能性がある
通年採用では企業が慎重に選考を進められるため、一括採用に比べて採用基準が厳しくなる傾向があります。
一括採用では大量採用を前提にポテンシャル重視で選考が進むことも多いですが、通年採用では学生が個別に評価されるため、即戦力や明確な志望動機、企業理解の深さなどがより重視されます。
そのため、準備が不十分な状態では選考を通過するのが難しくなる場合もあり、学生にとっては対策や自己分析の重要性が一層増します。
情報収集のハードルが上がる
通年採用は企業ごとに選考時期やプロセスが異なるため、学生は自分でこまめに情報を集める必要があります。
一括採用のように決まった時期に合同説明会や就活ナビサイトでまとまった情報が得られるわけではなく、常にアンテナを張っていなければチャンスを逃してしまう可能性もあります。
特に情報収集に不慣れな学生にとっては、どの企業が採用を実施しているかを把握するだけでも負担になりやすく、就職活動のハードルが上がる要因となります。
モチベーションの維持が難しい
就職活動が長期化しやすい通年採用では、モチベーションを保ち続けることが難しくなることがあります。
一括採用では周囲の学生と同じタイミングで活動を進めるため、自然と刺激を受けながら集中力を保つことができますが、通年採用では個人のペースで進める分、孤独感や焦りを感じる場面も増えるかもしれません。
結果として、選考に対する意欲が低下したり、準備の質が下がったりしてしまうリスクもあるため、自主的な計画と継続力が求められます。
能動的な就職活動が求められる
通年採用では、企業が一斉に情報を発信するわけではないため、学生自身が積極的に行動する姿勢が必要不可欠です。自分に合った企業を探し、適切なタイミングでエントリーし、選考の準備を進めるには、高い自主性と計画性が求められます。
一括採用のように「みんなと同じ流れに乗っていれば何とかなる」というわけにはいきません。情報を取りにいく意識や、自分のキャリアを主体的に考える姿勢がないと、満足のいく結果につながりにくくなります。
内定者同士の関わりが薄くなる可能性がある
通年採用では内定の時期や入社時期がバラバラになるため、同期とのつながりが希薄になりやすいという課題があります。
一括採用であれば、内定者懇親会や入社前研修を通じて、同じ時期に内定を得た仲間との一体感が生まれやすく、入社後も支え合える関係が築かれます。
一方で、通年採用ではそうした機会が限られ、入社後に孤立感を覚える学生もいるかもしれません。
【6ステップ】通年採用の実施方法
通年採用を効果的に進めるには、計画的な体制づくりが欠かせません。ここでは、企業が通年採用を実施する上で押さえるべき6つのステップについて解説します。
1. 要員計画から採用計画を立てる
通年採用を円滑に進めるためには、まず事業計画に基づいた要員計画の策定が欠かせません。どの部署に、いつまでに、どのような人材が何人必要なのかを明確にすることで、採用活動の方向性が定まります。
既存の従業員構成や業務量を踏まえ、現場の声も反映しながら、現実的で柔軟な採用計画を立てましょう。特に通年採用では長期にわたって人材を探すため、状況の変化に対応できるよう、余裕を持ったスケジュール設計が重要です。
2. 自社が求める人材像を明らかにする
採用の成果を高めるには、自社が本当に必要としている人材を明確に定義することが重要です。単なるスキルや資格だけでなく、社風や価値観に合った人物像を描くことがミスマッチの防止につながります。
理想的な人材をイメージするには、現在活躍している社員の特徴を分析するのも有効です。企業理念やビジョンに照らし合わせて、活躍が期待できる人物像を言語化し、それを採用チーム全体で共有することが大切です。
3. 採用活動に取り組む体制を整える
通年採用は継続的な運用が求められるため、個人任せにするのではなく、専任の採用チームを構築することが理想です。選考対応や学生管理、広報施策の運用など、業務は多岐にわたるため、役割分担を明確にし、効率的に機能する体制づくりが求められます。
さらに、採用チームには他社の動向や市場情報の収集といったリサーチ業務も期待されるため、採用に対する意識と専門性を持った人材を配置することが成功の鍵です。
4. 採用手法を決定する
求める人材像が明確になったら、ターゲットに合った採用手法を選定しましょう。求人サイト、ダイレクトリクルーティング、SNS採用、リファラル採用など、手法は多様化しています。
それぞれの特性や費用対効果を見極めた上で、自社の資源や目標に合った手法を組み合わせて活用するのが効果的です。通年採用では複数の施策を同時並行で展開する必要があるため、成果の分析と手法の見直しを繰り返す柔軟な運用が求められます。
5. 選考フローや選考基準を定める
学生の対応が年間を通じて発生する通年採用では、選考のプロセスを効率よく整備することが重要です。各ステップの所要時間や対応方法を標準化することで、選考の遅延や対応ミスを防ぎます。
また、選考基準にブレが生じないように、面接官や担当者への事前研修やマニュアル整備も欠かせません。選考の一貫性を保つことで、学生への公平性を確保しつつ、企業の信頼性向上にもつながります。
6. 採用担当者を育成する
通年採用では、採用活動の質が企業の競争力に直結します。そのため、採用担当者のスキルアップは非常に重要です。面接力や評価の視点に加え、人事法務やコミュニケーションスキル、ITツールの活用力など、多岐にわたる知識が求められます。
また、学生のフォローや入社後の定着支援にも関与する場面が増えるため、心理的なサポートスキルも重要です。定期的な研修や他社事例の研究などを通じて、担当者の成長を継続的に促す体制を整えましょう。
通年採用を成功させるポイント
ここでは、通年採用を成功させるポイントを大きく6つに分けて解説します。いずれも、通年採用を成功させるために必要不可欠な要素ですので、しっかりと理解しておくと良いでしょう。
明確なKPIを策定する
通年採用を成功させるためには、具体的で測定可能なKPIの策定が不可欠です。従来の一括採用とは異なり、通年採用では年間を通じて継続的に採用活動を行うため、進捗状況を定量的に把握し、適切な改善を図ることが重要です。
設定すべき主なKPIとしては、月別・四半期別の学生数、書類選考通過率、面接実施数、内定承諾率、入社後の定着率(3カ月、6カ月、1年)などが挙げられます。特に入社後の定着率は、採用の質を測る重要な指標です。また、採用単価や採用に要した期間なども効率性を評価する上で欠かせません。これらのKPIを定期的にモニタリングし、データに基づいた
採用戦略の見直しを行うことで、より効果的な通年採用が実現できます。
こうした分析を効果的に行うには、データの一元管理と可視化が重要です。ワンキャリアクラウドでは、採用の進捗や各指標をリアルタイムで確認できるダッシュボードを搭載しており、通年採用における継続的なPDCA運用を強力にサポートします。
対象とする人材要件、募集条件を見直す
通年採用では、従来の一括採用の枠にとらわれず、採用対象を広げることが求められます。例えば、既卒者や第二新卒、留学生、社会人経験者など、これまで見過ごされがちだった人材にもアプローチが可能です。
そのためには、現行の人材要件や募集条件を再定義し、多様なバックグラウンドを持つ人材を受け入れる体制を整えることが不可欠です。ワンキャリアクラウドでは、職種別や属性別に採用効果を分析できる機能が充実しており、要件の見直し後も迅速な効果検証が可能です。多様性を重視した採用設計をデータに基づいて支援します。
通年採用の実施をアピールする
通年採用を実施している企業であることを、求職者に明確に伝えることも成功の鍵です。
多くの求職者は依然として新卒一括採用や特定時期の中途採用を想定しているため、自社が通年採用を実施していることを積極的にアピールする必要があります。求職者に認知されなければ、どれだけ良い制度を整えても学生数の増加にはつながりません。
効果的なアピール方法として、企業の採用サイトやコーポレートサイトに「通年採用実施中」のメッセージを明記することから始めましょう。また、求人媒体への掲載時にも「通年採用」というキーワードを積極的に使用し、いつでも応募可能であることを強調します。SNSを活用した情報発信も重要で、採用担当者のX(旧Twitter)やLinkedInでの発信、会社の公式アカウントでの定期的な採用情報の投稿などが効果的です。さらに、業界イベントや転職フェアでの積極的な参加、大学との連携強化なども通年採用の認知度向上に寄与します。求職者が「いつでも応募できる」という安心感を持てるような情報発信を心がけましょう。
学生の状況に合わせた対応をする
通年採用では、新卒者、既卒者、転職希望者など多様な背景を持つ学生が混在するため、それぞれの状況に応じたきめ細かな対応が求められます。画一的な選考プロセスではなく、個々の候補者に最適化された対応を行うことが、優秀な人材の獲得と入社後の定着率向上に直結します。
新卒者には十分な説明時間を設けて企業理解を深めてもらい、転職希望者には迅速な意思決定とスピーディーな選考プロセスを提供するなど、候補者の立場に立った配慮が重要です。また、面接日程の柔軟な調整、オンライン面接の積極活用、選考結果の迅速なフィードバックなども候補者体験の向上につながります。さらに、内定後のフォローアップについても、入社時期が異なる候補者それぞれに合わせたコミュニケーション計画を立て、不安や疑問に丁寧に対応することで、内定辞退率の減少と入社への期待感向上を図ることができます。
AI(人工知能)などの効率の良い管理システム・ツールを活用する
通年採用を効率的に運営するには、デジタルツールの活用が不可欠です。年間を通じて継続的に発生する採用業務を人的リソースだけで対応するのは限界があるため、AI技術を含む先進的な採用管理システムの導入が成功の鍵です。
ATS(採用管理システム)の導入により、学生情報の一元管理、選考進捗の可視化、面接スケジュールの自動調整などが可能です。特にAI機能を搭載したシステムでは、履歴書の自動スクリーニング、適性検査結果の分析、面接評価の標準化なども実現できます。また、チャットボットを活用した学生対応の自動化、動画面接システムの導入、オンライン適性検査の実施なども効率化に貢献します。
ワンキャリアクラウドなら、これらの機能を包括的に提供し、通年採用に特化した運用サポートも充実しています。データ分析機能により採用KPIの可視化も簡単に行え、より戦略的な採用活動が実現できます。
採用活動を行うエリアを拡大する
通年採用の大きなメリットの1つは、地理的制約を超えた人材獲得が可能になることです。従来の一括採用では特定の地域や大学に採用活動が集中しがちでしたが、通年採用とリモートワークの普及により、全国、さらには海外からも優秀な人材を採用できる環境が整っています。
エリア拡大のメリットは、単純に母集団が増加するだけでなく、多様な価値観やスキルセットを持つ人材との出会いが期待できることです。地方在住の優秀な人材、海外在住の日本人、外国人材など、これまでアプローチできなかった層からの応募が見込めます。
そのためには、求人媒体の選定も重要で、全国に展開している大手サイトの活用、地方特化型の求人サイトとの連携、海外向け求人サイトへの掲載なども検討すべきです。また、オンライン面接システムの整備、リモートワーク環境の充実、転居支援制度の検討なども、エリア拡大を成功させるための重要な要素です。
通年採用をしている企業の傾向・実施企業例
実際に通年採用を導入している企業には、いくつかの共通点があります。ここでは、通年採用に向いている企業の傾向と、具体的な企業事例をご紹介します。
企業の傾向
通年採用を導入する企業には、価値観や働き方、採用に対する考え方に特徴があります。どのような傾向があるのか、主なポイントを見ていきましょう。
多様な価値観を受け入れている
通年採用を導入している企業には、異なる価値観や多様なバックグラウンドを尊重する文化が根付いている傾向があります。
たとえば、年齢や国籍、学歴だけでなく、留学経験や社会人経験、ユニークな活動歴などを積極的に評価し、多様性がもたらす新たな視点を組織の強みに変えようとする企業も少なくありません。
こうした企業は、画一的な人材だけでなく、個性や経験を武器にする人材を歓迎しており、創造性や問題解決力の高いチームづくりを重視しています。結果として、採用の間口が広くなり、通年採用との親和性も高くなっています。
実力主義で即戦力を重視する
通年採用を行っている企業は、学歴や社歴よりも「今できること」「今後伸びる力」に重きを置く傾向があり、実力主義の色が濃いのが特徴です。
採用活動に余裕を持てる通年採用では、面接や課題を通じて学生のポテンシャルやスキルを丁寧に見極めることができます。そのため、即戦力となる能力や主体性を持った人材が好まれやすく、スピーディーに結果を出したいと考える学生にとっては魅力的な環境です。
成果に応じた評価制度や昇進制度が整っている企業が多い点も、成長意欲の高い人材を惹(ひ)きつけています。
働き方の柔軟性が高い
通年採用を取り入れている企業は、就業形態に対しても柔軟な対応を行っているケースが多くみられます。フレックスタイム制やリモートワーク、在宅勤務などを導入し、社員のライフスタイルや価値観に合わせた多様な働き方を支援しています。
こうした柔軟な制度は、優秀な人材の定着や離職防止につながると同時に、多様な働き方を受け入れる組織風土を形成します。従来の画一的な働き方にとらわれず、時代の変化に即した組織運営を志向する姿勢が、通年採用との高い親和性を生んでいるといえるでしょう。
【6選】通年採用を実施している企業例
ここでは、実際に通年採用を実施している代表的な企業を6社ご紹介します。それぞれの取り組みから、通年採用の実態を知ることができます。
清水建設
清水建設は、学生の多様な就職観やキャリア志向に対応するため、新卒者向けの通年採用を実施しています(※1)。
卒業後すぐに就職しなかった方や留学経験者、第二新卒などを対象に、年間を通じて毎月1日の入社を受け入れており、就職時期の柔軟さが特徴です。
入社時には研修や通年入社式が用意されており、同期との交流や企業理解の機会も充実しています。「SHIMZ VISION 2030」の実現に向けて、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に迎え入れています。
実力や挑戦意欲を重視し、活躍の場がしっかり用意されている点も魅力です。
(※1)参考:清水建設「新卒通年採用について」
メルカリ
メルカリは、新卒・中途の区別なく通年で採用を行っており、年齢や性別、国籍といったあらゆる垣根を設けないダイバーシティ重視の採用方針を掲げています(※2)。
選考では即戦力性とマッチ度が重視され、インターンを経て現場経験を積んだ上で正社員として本採用に進む流れが基本となっています。
入社後はメンターのサポートを受けつつも早期の現場貢献が期待され、柔軟な働き方や豊富な福利厚生制度も魅力です。自らの力で挑戦し、変化を楽しむ人材に適した環境です。
(※2)参考:mercan「『即戦力』『トップ人材』を求める観点に変化はない?メルカリ新卒採用の今」
ディー・エヌ・エー
ディー・エヌ・エーは、年齢・学歴・就業経験を問わず多様な人材を歓迎する通年採用を実施しています。
職種はビジネス職・エンジニア職・デザイナー職・AIスペシャリスト職に分かれ、各分野で高い専門性や挑戦意欲を持つ人材に門戸を開いています(※3)。
事業の変化に柔軟に対応し、正解のない課題に挑む力を重視しており、インターンや早期選考の機会も通じて、実践的な力を発揮する場を提供していることも特徴です。
個々の「寄り道」や多様な経歴を強みとして評価し、新たな価値創出に貢献できる仲間を広く募っています。
(※3)参考:ディー・エヌ・エー「寄り道経験者も大歓迎」
サイボウズ
サイボウズは、新卒・キャリア・障害者採用を問わず、多様な職種を対象に通年採用を実施しています(※4)。職種の希望が決まっていない場合でも応募可能で、選考を通じて対話を重ねながら最適な配属先を決定する柔軟なプロセスが特徴です。
「チームワークあふれる社会を創る」という理念に共感できるかどうかを重視し、スキルだけでなく人柄やカルチャーフィットも選考基準に含まれます。
面接は和やかな雰囲気で進行し、職種のマッチングや将来のキャリアも一緒に考えてくれる伴走型の選考体制が整っています。
(※4)参考:サイボウズ「採用で大切にしていること」
PwC Japan有限責任監査法人
PwC Japan有限責任監査法人では、ビジネス・戦略・ITなど複数分野のコンサルタント職を対象に通年採用を実施しています(※5)。選考は年間を通して随時エントリー可能で、各職種ごとのタイミングで柔軟に参加できます。
新卒者には配属前の研修に加え、デジタルスキルや語学研修、書籍補助、eラーニングなど多彩な成長支援制度を用意されています。
特に「Digital Upskilling」や「Global Communication Program」はプロフェッショナルとしての基礎力を高める環境が整っており、実務経験に裏打ちされた人材育成モデル「70:20:10」を採用していることも特徴です。
通年採用を通じて、多様な志向やタイミングに応じたキャリア形成が可能といえるでしょう。
(※5)参考:PwC Japanグループ「選考情報 新卒採用」
サイバーエージェント
サイバーエージェントは、夏と冬の選考を通じて柔軟に優秀な人材を受け入れている企業の一例です。応募に際して学年や卒業年度、実務経験の有無などを問わず、「チャレンジしたい人」を広く対象としている点が特徴です。
ビジネス・エンジニア・クリエイターなど多様な職種に門戸を開いており、選考通過者をインターンに招待するなど、採用と育成を段階的に進める姿勢もみられます。
変化の激しいインターネット業界で即戦力となる人材を求める一方、実力主義や成長意欲を重視する社風から、柔軟で開かれた採用方針を展開しているのが通年採用型企業としての特色です。
(※6)参考:サイバーエージェント「新卒採用募集概要」
おわりに
通年採用は一括採用と比べてコストや労力がかかり、「難しい」と感じる採用担当者も多いでしょう。しかし、人手不足が深刻化し、優秀な人材の獲得競争が激化する現在において、通年採用は企業の採用力を大きく左右する重要な戦略の1つとなっています。
成功の鍵は、明確なKPI設定と効率的な体制構築にあります。AIツールの活用や対象人材の見直し、柔軟な対応力を身につけることで、通年採用の課題は十分に克服可能です。多様な価値観を持つ優秀な人材との出会いや、ミスマッチの防止といったメリットを最大限に生かし、自社の競争力向上につなげていきましょう。
ワンキャリアでは、通年採用を含む効果的な採用戦略の構築をサポートしています。貴社の採用課題解決に向けて、ぜひお気軽にご相談ください。
