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企業にとってなぜインターンシップが重要なのか
採用市場が年々厳しさを増すなか、インターンシップは学生と早期に接点を持ち、自社理解を深めてもらう重要な機会となっています。単なる会社説明ではなく、実体験を通じて相互理解を深めることで、採用の質向上にもつながります。
優秀な人材への早期接触と母集団形成のきっかけになる
インターンシップは、就職活動が本格化する前の段階から学生と接点を持てる貴重な機会です。売り手市場が続くなか、優秀な学生ほど早期から企業研究や業界理解を進めており、インターンシップを通じた接触が母集団形成の起点となります。
実際の業務を体験してもらうことで、企業側は学生の適性やポテンシャルを見極めやすくなり、学生側も仕事内容や働き方を具体的にイメージできます。結果として、早期から相互理解が進み、選考につながる質の高い母集団を形成しやすくなります。
「カルチャーフィット」の見極めによるミスマッチを防止できる
インターンシップの大きなメリットの一つが、採用におけるミスマッチの防止です。説明会や面接だけでは伝わりにくい社風や価値観、職場の雰囲気も、実際の就業体験を通じて学生に体感してもらえます。
企業側にとっても、学生がどのような姿勢で業務に向き合うかを実務に近い環境で確認できるため、カルチャーフィットの判断がしやすくなります。結果として、入社後のギャップによる早期離職を防ぎ、採用コストの無駄を抑える効果が期待できます。
若手社員のリーダーシップ経験になる
インターンシップは学生向け施策であると同時に、社内人材育成の機会としても有効です。特に、インターン生の受け入れや指導を担う若手社員にとっては、業務の進め方を言語化し、相手に伝える経験を積む場となります。
学生をまとめ、進捗を管理する役割を担うことで、自然とリーダーシップやマネジメント視点が養われます。また、自身の仕事を客観的に振り返るきっかけにもなり、若手社員の成長促進やエンゲージメント向上にもつながります。
インターンシップにかかる費用の内訳
インターンシップには、目に見えやすい外注費や学生への支給費用だけでなく、社内工数などの内部コストも発生します。正確な予算設計を行うためには、どのような費用がどこで発生するのかを整理することが欠かせません。
内部コスト
内部コストとは、インターンシップを社内で運営する過程で発生する「人」に関わる費用を指します。特に就業型インターンシップでは、学生は労働者として業務に従事するため、給与や手当の支給が必要になります。
また、企画や運営に携わる社員の工数も見落とせないコストです。主な内部コストは以下のとおりです。
- 採用担当者・協力社員の人件費(企画・運営・指導)
- 学生への給与(有給インターンの場合)
- 学生の交通費・宿泊費
- 保険料や各種手当
- 文房具や飲料水などの細かな社内経費
内部コストは固定費化しやすく、削減が難しい傾向にあるため、事前に想定工数を整理したうえで設計することが重要です。
外部コスト
外部コストとは、社外のサービスや設備を利用することで発生する費用です。募集規模や実施形式によって金額が大きく変動しやすい点が特徴で、インターンシップ費用全体を左右する要素でもあります。
主な外部コストは以下のとおりです。
- 求人媒体や採用サイトへの募集掲載費
- スカウト媒体や人材サービスの利用料
- 会場費(社外施設を使用する場合)
- 学生の飲食代(昼食・飲料など)
- 備品代・消耗品費・パンフレット制作費
外部コストは選択するサービス次第で調整しやすく、工夫次第で費用削減につなげやすい領域です。そのため、コスト最適化を考える際の重要な見直しポイントとなります。
インターンシップの実施にかかる費用相場
インターンシップの相場感を把握せずに企画を進めると、想定以上のコストが発生するケースも少なくありません。ここではインターンシップの実施にかかる費用相場を解説します。
項目別の費用相場
インターンシップの費用は、実施形式や募集方法によって前後しますが、項目別に整理すると全体像を把握しやすくなります。競合事例を踏まえた、一般的な費用相場は以下のとおりです。
- 募集掲載費用:40万〜60万円
- 人材紹介・スカウト利用料:50万〜80万円/人
- 会場費:6,000〜10,000円/時間(30名規模)
- 学生の飲食代:1,500円前後/人・日
- 学生への給与(有給の場合):時給1,200〜1,400円
- 交通費支給:1,000〜3,000円/人
これらを組み合わせて、自社の実施条件に近い形で概算することが重要です。
1dayインターンシップの場合
1dayインターンシップは、企業理解や仕事体験の入口として実施されるケースが多く、比較的コストを抑えやすい形式です。30〜50名規模・無給・都内開催を想定した場合の目安は以下のとおりです。
- 募集掲載費用:30万〜40万円
- 会場費(8時間):5万〜8万円
- 学生の飲食代:5万〜7万円
- 備品・消耗品費:1万〜3万円
合計すると、40万〜50万円前後が一般的な相場となります。オンライン開催や自社オフィス活用により、さらに削減できる余地もあります。
5daysインターンシップの場合
5daysインターンシップは、業務理解やカルチャーフィットを深める目的で実施されることが多く、1dayと比べて費用は増加します。30〜50名規模・無給・社外会場利用を想定した場合の目安は以下のとおりです。
- 募集掲載費用:30万〜50万円
- 会場費(8時間×5日):25万〜40万円
- 学生の飲食代:20万〜35万円
- 備品・運営関連費:5万〜10万円
合計では、70万〜100万円前後がひとつの目安です。内容を充実させるほど費用は増えるため、目的とのバランスが重要になります。
インターンシップの実施費用を抑えるためのポイント
インターンシップは工夫次第で、効果を落とさずにコストを抑えることが可能です。募集手法や開催形式、活用できる制度を見直すことで、費用対効果を高められます。無理な削減ではなく、戦略的な最適化が重要です。
募集方法を見直す
インターンシップ費用のなかでも、募集費用は全体に占める割合が大きく、見直しによる削減効果が出やすい項目です。求人媒体への掲載だけに頼らず、複数の募集チャネルを組み合わせることで、コストを抑えながら母集団形成が可能になります。
具体的には、求人サイトに加え、大学のキャリアセンター、オウンドメディア、SNS、リファラル、ダイレクトスカウトなどを活用する方法があります。特に無料で利用できる手法を取り入れることで、募集費用を大きく圧縮できます。
インターンシップの募集はワンキャリアがおすすめ
ワンキャリアは、35万人以上の学生が利用する就活サイトで、インターンシップから本選考、説明会まで幅広い募集情報を掲載できます。早期・通期の採用にも柔軟に対応できるため、特定の時期に限らず継続的な母集団形成が可能です。
学生の就活行動に合わせて露出を確保できる点は、無駄な広告費を抑えつつ、関心度の高い応募を集めたい企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
オンラインで開催する
オンライン形式でインターンシップを実施することで、会場費や学生の交通費といったコストを削減できます。加えて、場所に縛られず参加できるため、地方学生や多忙な学生にもアプローチしやすく、応募数の増加が期待できます。
政府も学業との両立を考慮したオンライン開催を推奨しており、短期インターンや説明型プログラムとの相性も良好です。対面とオンラインを目的に応じて使い分けることで、コストと効果の両立が可能になります。
人材開発支援助成金などの公的制度を活用する
インターンシップにかかる費用を抑える手段として、自治体や公的機関が提供する助成金制度の活用も有効です。地域や業種によっては、学生1人あたり・日数単位で補助が受けられる制度もあります。
対象要件や申請手続きは限定的ですが、条件に合致すれば実質的な負担を軽減できます。事前に自社が属する自治体や業界団体の制度を調べ、活用できるものがないか確認しておくことが重要です。
学生に支給する費用は削減しない
コスト削減を考える際に注意すべきなのが、学生に支給する費用です。交通費や宿泊費、給与を安易に削ると、企業イメージの低下や応募数の減少につながる恐れがあります。
特に就業型インターンシップでは、実態が労働とみなされる場合、適切な賃金支払いが法的にも求められます。削減すべきは募集費用や会場費などの外部コストであり、学生への待遇は「投資」と捉えて設計することが重要です。
インターンシップにかかる費用で節税する方法
インターンシップ費用は、処理方法によって税務上の扱いが変わります。正しい勘定科目で計上し、損金として適切に処理することで、税負担の軽減につながる場合もあります。基本的な考え方を押さえておきましょう。
支出の性質に合わせて正しい勘定科目で計上する
インターンシップ費用で節税を考える際は、まず支出内容に応じて適切な勘定科目で計上することが重要です。学生に支給する交通費や昼食代は福利厚生費、就業に対する日当や報酬は給与手当として扱うのが一般的です。
支出の性質と異なる科目で処理すると、税務上の指摘を受ける可能性があります。正しく区分することで経費として認められやすくなり、結果的に法人税の負担軽減につながります。
学生への支給額を「損金」として扱い課税所得を圧縮する
学生への支給額は、人件費として損金に算入できるケースが多く、適切に処理することで課税所得を圧縮できます。法人税は「課税所得×税率」で計算されるため、損金が増えるほど税額は抑えられます。
また、インターンシップにかかる交通費や報酬を経費として計上することで、単なるコストではなく節税効果を生む支出と捉えることが可能です。安易に支給額を削るより、税務面を理解した設計が重要です。
むやみなコストカットは避け、外部委託費などの見直しを優先する
インターンシップ費用を抑えたい場合でも、学生への支給額を減らす判断は慎重に行いましょう。交通費や報酬を削ると、企業イメージの低下や応募数減少を招く恐れがあります。
まず見直すべきは、募集費用や会場費、外部サービス利用料などの外部コストです。採用手法や実施形式を工夫することで、学生の満足度を保ちつつ、無理のないコスト最適化を実現できます。
インターンシップの成功事例2選
続いて、インターンシップの成功事例を2つ紹介します。
ワークスアプリケーションズ
同社は、インターン優秀者に卒業後数年間有効な権利を与える「入社パス」制度によって、長期的なタレントプール構築に成功しています(※1)。他社への就職や留学を経てからの入社も認めるこの柔軟な制度は、学生から絶大な支持を集め、累計挑戦者は35万人を超えました(2025年時点)。「囲い込み」ではなく、あえて他流試合を許容し、長期的な接点を維持することで、結果として質の高い人材の採用を実現しています。
(※1)参考:PR TIMES「WAPが内定直結型のサマーインターンを開催 累計35万人が挑戦した問題解決型プログラム。論理的思考で挑む6日間」
ニトリ
採用ブランディングにおいては、インターン人気企業ランキングで6年連続1位(2024年時点)を誇るニトリの事例が際立ちます(※2)。同社は、ゲーム形式のプログラムを通じて「製造物流IT小売業」という独自のビジネスモデルを深く体感させることに注力しました。単なる小売業というイメージを払拭し、企業の強みを正しく理解させることで学生の意識を変え、理系学生を含む幅広い層の母集団形成に成功しています。
(※2)参考:HRzine「インターン人気ランキング、1位は6年連続「ニトリ」 自動車メーカー・ITの人気上昇—みん就調べ」
インターンシップの費用に関するよくある質問
インターンシップを実施する際、プログラムの内容と同じくらい企業担当者を悩ませるのが「どこまで費用を負担すべきか」「リスク管理はどうすべきか」という金銭・契約面の問題です。ここでは、多くの企業が直面する3つの疑問について解説します。
交通費は全額支給すべきですか?それとも一律支給が良いですか?
交通費の支給方法は、インターンシップの期間や形式、そして企業の予算規模によって最適な判断が異なります。
もっとも学生からの満足度が高いのは「実費全額支給」です。特に地方の優秀な学生や、遠方からの参加を促したい場合は、全額支給にすることで経済的なハードルを取り除き、母集団形成の質を高めることができます。長期インターンシップや、採用選考に直結するような数日間のプログラムでは、全額支給が一般的になりつつあります。ただし、精算業務(領収書の確認や経路計算)の事務工数が発生する点はデメリットです。
一方、「一律支給(例:1日1,000円)」や「上限あり支給(例:往復2,000円まで)」は、予算管理がしやすく事務手続きも簡素化できるため、1day仕事体験のような参加人数の多いプログラムでよく採用されます。ただし、遠方の学生にとっては持ち出し費用が発生するため、応募意欲を削ぐ要因になりかねません。最近では、「オンライン開催」を併用することで交通費問題を解決する企業も増えています。自社がターゲットとする学生の居住エリアや、確保したい人数と予算のバランスを見て決定することをおすすめします。
業界によってインターンシップにかける費用相場に違いはありますか?
結論から申し上げますと、業界による費用のかけ方には明確な傾向の違いがあります。
IT業界、コンサルティング業界、金融業界の一部など、人材獲得競争が特に激しい業界では、インターンシップへの投資額が高い傾向にあります。これらの業界では、実務を行う長期インターンシップに対して「時給(給与)」が発生するのが一般的であり、さらに交通費全額支給、ランチ代の補助、遠方からの参加者には宿泊費まで負担するケースも珍しくありません。優秀な学生を早期に囲い込むため、コストを惜しまない傾向があります。
一方で、メーカーやサービス業、小売業などで実施される1day仕事体験(オープン・カンパニー形式)では、給与は発生せず、交通費も自己負担または一部支給というケースが多く見られます。しかし、近年の人手不足を受け、これらの業界でも「昼食(お弁当)支給」や「ノベルティグッズの配布」、「参加者限定の選考ルート案内」といった特典を用意し、金銭以外の付加価値で費用対効果を高めようとする動きが活発化しています。相場を意識しつつも、競合他社がどのような待遇を提示しているかをリサーチして設定することが重要です。
インターンシップ中の事故に備える保険は必要ですか?
インターンシップ中の事故やトラブルに備える保険への加入は、企業と学生双方を守るために必須と言えます。必要な保険の種類は、インターンシップの形態が「雇用契約あり(給与あり)」か「雇用契約なし(無報酬)」かによって異なります。
まず、給与が発生するインターンシップの場合、学生は労働基準法上の「労働者」とみなされるため、企業の従業員と同様に「労災保険」の適用対象となります。手続き漏れがないよう注意が必要です。
一方、無報酬のインターンシップ(1day仕事体験など)の場合は、労災保険が適用されません。しかし、学生が移動中に怪我をしたり、企業の備品を壊してしまったり、あるいは情報漏洩を起こしてしまったりするリスクは存在します。そのため、一般的には学生自身に大学経由で「学生教育研究災害傷害保険(学研災)」および「インターンシップ賠償責任保険」に加入してもらうか、企業側で民間の「イベント保険」や「レクリエーション保険」に加入してカバーする形をとります。万が一の際に「誰が責任を負うのか」が曖昧にならないよう、募集要項に保険の扱いを明記し、事前にリスクヘッジを行っておくことが極めて重要です。
まとめ
本記事では、インターンシップの実施にかかる費用の内訳や相場、コストを最適化するポイントについて解説しました。
インターンシップは、優秀な人材との早期接触やミスマッチ防止、さらには若手社員の育成にも寄与する重要な採用戦略です。実施には人件費や会場費、広報費といったコストがかかりますが、これを単なる「出費」ではなく、将来の企業成長に向けた「投資」と捉える視点が不可欠です。
費用対効果を高めるためには、すべての工程に予算をかけるのではなく、メリハリをつけることが重要です。たとえば、開催形式をオンラインにして会場費を抑えつつ、その分を学生への交通費支給やコンテンツの充実に充てるなど、ターゲット学生の満足度に直結する部分への投資は削減すべきではありません。また、助成金の活用や適切な税務処理によって、実質的な負担を軽減することも可能です。
コストと質のバランスを見極め、学生にとっても企業にとっても実りあるインターンシップを実現してください。本記事が、貴社の採用活動を成功に導くための予算計画の一助となれば幸いです。

