目次
「採用ブランディングの成功事例はどのようなものがある?」と考えている採用担当者様必見! 本記事では、採用ブランディングの成功事例を14個ご紹介します。また、採用ブランディングの成功事例から学ぶ秘訣や採用ブランディングを成功に導く7つのステップもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも採用ブランディングとは? 採用担当者が今知るべき基本知識
採用活動における競争が激化し、求職者の価値観が多様化する現代において、企業が自社に合った優秀な人材を安定的に確保するためには「採用ブランディング」の理解と実践が不可欠です。
本章では、採用ブランディングとは何かという基本的な定義や目的、混同されやすい「企業ブランディング」「採用広報」「採用マーケティング」との違いについて、採用担当者の皆様が知っておくべき知識をわかりやすく解説します。
採用ブランディングの定義
採用ブランディングとは、企業が自社の持つ特性や価値観・文化を明確にし、求職者に対して「自社は魅力的な企業である」という一貫したイメージを形成・強化するための戦略的な取り組みを指します。
企業のアイデンティティや働く意義を明確に言語化し、ロゴやスローガンといった視覚的な要素に留まらず、求職者が抱く「共通した感情・価値観・信頼感」を醸成することを目指します。これにより、他社と差別化し、多くの企業の中から自社を選んでもらう理由を戦略的に育てていくことが、採用ブランディングの基本的な考え方となります。
採用ブランディングは採用活動の根幹を支える土台であり、採用担当者が最初に理解すべき重要な概念といえます。
採用ブランディングの目的
採用ブランディングの目的は、単に応募数を増やすことだけではなく、自社の価値観に深く共感し、入社後に長期的に活躍できる「質の高い人材」を獲得することにあります。
企業がどのような存在であるか、働くことでどのような価値を提供できるかを継続的に発信することで、求職者は企業理念や文化を深く理解し、最終的に共感に至る状態を目指します。この共感の段階で入社した人材は、企業とのマッチ度が非常に高いため、高い定着率と活躍の継続が期待できます。
このように、母集団の質と量を向上させ、採用活動全体の効率化と安定化に大きく寄与することが、採用ブランディングの目指すゴールです。
企業ブランディングとの違い
企業ブランディングと採用ブランディングの最も大きな違いは、そのターゲットにあります。
企業ブランディングは、自社や製品・サービスに対する「社会全体」の認知やイメージを形成し、強化することを目的としています。例えば、企業の顧客や消費者・投資家・取引先などを対象とし、市場での競争優位性の確立やロイヤリティの向上を目指します。
一方採用ブランディングは、そのターゲットを「就職・転職を検討する求職者」に限定し、自社を「魅力的な雇用主」として位置づけることに焦点を当てます。企業ブランディングが「市場でどのように見られたいか」であるのに対し、採用ブランディングは「働く場所としてどのように見られたいか」という視点に立ちます。
両者は根底にある企業理念や価値観を共有すべきですが、メッセージの訴求点や発信チャネルは、それぞれのターゲットの関心に合わせて設計される必要があります。企業ブランドと採用ブランドが一貫していることが、求職者への信頼感を高める鍵となります。
採用広報との違い
採用広報と採用ブランディングは密接に関わるものの、役割が異なります。
採用広報は、自社が求める人物像に合致する人材からの応募を具体的に促すために行う、「情報提供」を中心とした広報活動です。採用情報やイベント告知、社員インタビューの公開など、応募につなげることに重点を置いた実行フェーズの活動と言えます。
一方採用ブランディングは、自社の価値観や目指す姿といった根幹を明確にし、求職者の共感や信頼を醸成する、より戦略的で包括的な取り組みです。採用広報が「何を伝えるか」という実行に特化しているのに対し、採用ブランディングは「どのようなブランドイメージを築くか」という土台作りと、そのブランドを構成する価値観を定める役割を担います。
したがって、採用広報は採用ブランディングという大きな戦略の一部として位置づけられ、ブランディングによって確立されたメッセージの一貫性を保ちながら情報発信を行う必要があります。
採用マーケティングとの違い
採用マーケティングは、就職・転職希望者に自社の魅力や特徴を効果的に理解してもらうことを目的に、マーケティング手法を用いて行う具体的なアプローチを指します。具体的には、ペルソナ設定、情報発信チャネルの選定、効果測定と改善など、科学的な手法を用いて採用活動の効率化を図ります。
採用ブランディングと採用マーケティングの関係は、前者が「戦略」であり、後者がその「戦術」であると理解すると明確です。採用ブランディングは「企業としてどう見られたいか」というブランドの価値を構築する段階であり、ここで形成された「自社の価値」が採用マーケティングの前提となります。
採用マーケティングは、この価値を基に、4P(Product, Price, Place, Promotion)やAISASなどのフレームワークを活用して、誰に、いつ、どのように届けるかを設計し、具体的な打ち手に落とし込んでいきます。
つまり、採用ブランディングが「何を伝えるか」を定義し、採用マーケティングがそれを「どのように届けるか」を設計する役割分担の関係にあるのです。
採用ブランディングが注目される背景
近年、採用市場は大きく変化しており、従来の採用手法だけでは優秀な人材の確保が難しくなっています。労働人口の減少や情報収集手段の多様化といった社会構造の変化が、企業に自社の魅力を主体的に示す必要性を高めており、その具体的な施策として採用ブランディングが重視されるようになりました。
ここでは、採用ブランディングが企業にとって不可欠となった3つの背景を詳しく解説します。
労働人口減少による人材獲得競争の激化
採用ブランディングが注目される最も大きな背景として、少子高齢化の進行に伴う労働力人口の持続的な減少が挙げられます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計では、労働力人口は2022年の6,902万人から、2030年には6,556万人、2040年には6,002万人へと長期的に減少していく見込みです(※1)。このデータが示すように、今後、企業間の人材獲得競争はますます激しくなります。従来の採用手法や曖昧な企業イメージに頼っているだけでは、優秀な人材の確保は極めて困難になるでしょう。
だからこそ、自社の提供できる価値や働く意義を明確に言語化し、競合他社との差別化を図る必要があります。求職者に対し、「なぜ自社を選ぶべきなのか」という強力な理由を与えることが急務であり、その戦略的な活動の中核を担うのが採用ブランディングなのです。
労働市場が縮小する中で、応募の量だけでなく「母集団の質」を高め、自社にフィットする人材を確実に引き寄せるための土台作りとして、採用ブランディングは不可欠な戦略となっています。
(※1)参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「2023年度版 労働力需給の推計(速報)」
インターネットやSNSの普及
インターネットやSNSの普及も、採用ブランディングが重視される大きな要因です。企業にとっては、従来の就職情報誌や大規模な合同説明会といった限られた手段に依存することなく、自社の採用サイトやブログ・動画メディア・各種SNSなどを活用して、いつでも自由に、かつ多様なチャネルを通じて求職者に情報を届けられる環境が整いました。
しかし、この情報化社会は、企業側にとってのメリットだけをもたらしたのではありません。社員や元社員・選考経験者が、クチコミサイトや個人のSNSを通じて企業のリアルな印象や体験を自由に発信できるようになりました。
これにより、企業が発信する情報だけでなく、第三者の声によって企業イメージが形成されるという側面も強まっています。今後は、「自社がどのように発信しているか」だけでなく、「求職者や社会からどのように見られているか」をこれまで以上に意識し、戦略的にブランドイメージを管理することが求められます。実態に基づかない情報発信は、すぐにクチコミによって見抜かれ、ブランドイメージを損なうリスクがあるため、情報の一貫性と誠実な発信が不可欠になっていくでしょう。
就活生の価値観の多様化
現代の就職市場において、特に1990年代後半以降に生まれた「Z世代」が社会の主役になりつつあることも、採用ブランディングの重要性を高めています。
この世代は、従来の世代と比較して、報酬の多さや競争での勝利といった「外発的動機」よりも、「成長できる環境」「社会への貢献度」「仕事のやりがい」といった「内発的動機」を重視する傾向が顕著です。彼らは、単なる労働条件ではなく、「この企業で働く意味」や「企業の理念・ビジョン」に共感できるかどうかを重視して入社先を決定することが多いです。
採用においては、この価値観の多様化に対応し、自社が提供できる独自の価値や働く意義などを求職者1人1人に響く形で発信する必要があります。内発的動機は個々人で異なるため、幅広い層に向けた画一的なメッセージでは共感を呼ぶことはできません。自社のアイデンティティを明確にした上で、それに共感し、長く活躍してくれる人材に的確にメッセージを届ける。この「自社に合う人材を惹きつける」ための活動こそが採用ブランディングであり、多様化する価値観に対応するための最も有効な手段なのです。
採用ブランディングの成功事例14選
採用ブランディングは、理念共感型の人材獲得や採用活動の効率化に直結する重要な戦略です。しかし、理論を理解するだけでは実践は困難です。
そこで本章では、実際に採用ブランディングに成功した企業の具体的な事例を解説します。各社がどのような課題を抱え、どのような施策を実行し、どのような成果を得たのかを深く分析することで、貴社の採用戦略のヒントを見つけてください。
成功事例1. サイバーエージェント
インターネット産業の多角的な事業展開で知られるサイバーエージェントは、「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」という理念を掲げ、メディア、広告、ゲーム、AI、DXなど幅広い領域で事業を展開しています。同社は新卒採用において、企業とともに新たな事業を創出する意欲を持つ人材の獲得を目指し、特に「素直でいい人」という人物像を重視しています。
同社が抱えていた採用上の課題の一つは、大規模なオフライン説明会運営に伴う採用担当者の工数負荷の大きさ、そして、企業側からの発信だけでなく、学生に対し第三者視点から自社の魅力を深掘りして伝える動画コンテンツの必要性でした。
そこで、学生の動画視聴傾向が高い点に着目し、就職活動サービス「ワンキャリア」の動画コンテンツを戦略的に活用しました。会社説明会のプロセスを、動画視聴後に選考へと進む形に最適化しました。この施策の結果、従来の採用ブランディングで打ち出していた「1年目から新規事業に挑戦」というイメージから、事業成長の基盤を支える「3年程度、既存事業の修羅場を経験してもらう」という、より実態に即した新たなブランドメッセージを学生に浸透させることに成功しました。また、ブランディングを転換したことで、日系大手企業や外資系企業を志望する層など、これまで接点の少なかった優秀な学生層へのリーチ拡大にもつながり、採用の幅を広げることに成功しました。
サイバーエージェントの事例は、情報発信の手段を変えることで、訴求する「メッセージ」と「ターゲット層」を最適化し、ブランドイメージの転換を成功させた好例です。
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とにかく寄り添ってくださる「良い人」が多かった。社員の方々一人一人が就活生視点に立ってくださり目を見て真っ直ぐお話を聞いてくださる印象。最初から最後まで本当に人の魅力に心を動かされた。
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若手にも数字と裁量を渡し、失敗の学びを歓迎する姿勢が一貫。社員の方々がフラットかつ説明がわかりやすく、具体例で返してくれた。
成功事例2. 鈴与システムテクノロジー
静岡に本社を構える鈴与システムテクノロジーは、220年以上の歴史を持つ鈴与グループのIT中核企業として、物流、エネルギー、食品、建設、航空など多様な分野のシステム開発、保守、運用を一手に担っています。
同社が採用で直面していた課題は、就活の早期化が進むIT志望学生への接点不足と、県外在住でU・Iターンを検討している学生への直接的なアプローチの難しさでした。従来の採用活動では大手ナビサイトが母集団形成の核となっていましたが、情報解禁時期が3月1日に限定されるため、早期から動く優秀な学生層への対応に限界を感じていました。
この課題を解決するため、同社は学生利用率が高く、スカウト機能で早期層に直接アプローチできる「ワンキャリア」を導入しました。スカウトを軸としつつ、県外大学への訪問、学内セミナー、大学生協イベントへの参加、サマー1dayインターン、10月選考の案内配信などを戦略的に組み合わせることで、首都圏やU・Iターン希望者に対して面的なリーチを実現しました。同時に、企業の実態を学生に正しく理解してもらい、信頼性の高いブランドイメージを構築するため、学生のクチコミ収集にも注力しました。その結果、「ワンキャリア 就活クチコミアワード2025」の東海ランキングでGOLDを受賞し、第三者による客観的な評価の可視化に成功。この実績をスカウト文面に記載することで、開封率や受諾率の向上にもつながり、早期エントリー数は約1.2倍に増加しました。
スカウト機能による「早期層への接点拡大」と、クチコミを活用した「信頼性の高い情報提供」の両輪で、採用ブランディングの強化と内定獲得を実現した成功事例です。
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静岡を拠点にして、U・Iターン希望者にも適した環境です。ワークライフバランスにも配慮があり、平均残業時間が少ない・有休取得率が高いなど、働きやすさが整っています。テレワークやフレックス制度の導入も進んでおり、柔軟な働き方が実現されています。
成功事例3. ノースサンド
テクノロジーを活用したコンサルティングサービスを提供するノースサンドは、採用規模の拡大を目指す中で、「コンサル志望や成長志向の高い学生を含む幅広い層に、自社のリアルな実像を届けたい」という課題を抱えていました。特に、成長意欲の高い学生に自社の魅力が正しく伝わっていない点に危機感を覚えていました。
そこで同社は、学生クチコミなどの豊富なデータ基盤と、親身なサポート体制を評価し、「ワンキャリア」の求人掲載を導入することで、採用ブランディングを本格化させました。
取り組みの第一歩として、求人掲載を起点に母集団を拡大し、その後はYouTubeでの企業説明会「ワンキャリアライブ」や、記事型広告へと施策の幅を広げました。これらのコンテンツでは、「ノースサンドらしさ」を伝えるメッセージを一貫させつつ、第三者視点のプラットフォームを介して発信することを徹底しました。この継続的な取り組みにより、学生側での企業認知度が着実に高まり、母集団は年率1.5倍のペースで拡大しました。さらに、クチコミを起点とした改善活動によって説明会の満足度は98%に向上するなど、学生の声をフィードバックとして採用活動の質を高めるサイクルが構築されました。
その結果、地方大学の学生や、就活への意欲が高いにもかかわらず接点の少なかった層へのリーチが拡大し、同社が目指す「コンサル志望学生の登竜門」としての採用ブランド像の確立に大きく近づいています。ブランドイメージと実態を高いレベルで一致させ、信頼性を高めることで成功した事例と言えます。
★★★★
コンサルティングの業界で今後もニーズが広がっていくであろうPMOの領域に強みを持っているからです。
成功事例4. ワンスター
「BeSTAR」という理念の下、通販企業を対象としたダイレクトデジタルマーケティング支援を行うワンスターは、急成長に伴う採用拡大期にありました。
同社が直面していたのは、採用情報が解禁される3月以前からの早期接触機会の創出と、企業の認知度およびイメージを同時に向上させるという二重の課題です。特に、競合他社と比較して認知度の低い学生層に、自社の明確な魅力を伝える必要がありました。
この課題に対し、同社は「ワンキャリア」の求人掲載に加えて、YouTubeで配信される「ワンキャリアライブ」へ継続的に出演するという戦略を採用しました。情報発信のメッセージは「理念経営」や「D2C」といったシンプルかつキャッチーなキーワードに絞り込み、これを第三者のプラットフォームを通じて一貫して可視化・発信することを徹底しました。これにより、もともと同社を認知していなかった層や、他社を第一志望としていた学生に対しても、ワンスターの独自の企業像を強く想起させる運用を実現しました。その結果、ワンキャリアライブの視聴をきっかけとして、学生との会話の導入がスムーズになり、これまで関心が薄かった層に対しても効果的な魅力訴求が可能になりました。この取り組みによって、母集団の拡大を達成すると同時に、「ワンスター=〇〇(自社らしさ)」という短い言葉で伝わる明確な採用ブランドの浸透に成功しました。
キャッチーなメッセージと一貫した露出戦略により、認知度とブランドイメージを同時に高めた好事例です。
★★★★
ワンスターが行っている理念経営、伴走支援について理解が深まった。 理念の話が20分ほどあり、他の会社より理念を重視していると感じた。
※出典:ワンスター|2027年卒総合職の業界・事業の情報に関するクチコミ
成功事例5. 三幸製菓
新潟に本社を置く三幸製菓は、採用担当者がほぼ一人、予算も限られ、学生からの認知度も極めて低いという厳しい状況から採用ブランディングに取り組みました。そこで重視したのが、競合とどう差別化し、学生にどのような企業として認知されたいかを定める「ポジショニング」の発想です。
同社は数ある強みのなかから「成長」というキーワードに一点集中し、説明会や就職サイト、ブースデザインまで一貫して訴求しました。その結果、説明会来場者やエントリー数は飛躍的に増加。さらに、経営陣と企業の将来像を共有し、全社的な取り組みとして推進したことが成功を後押ししました。
知名度の低い企業でも、明確な軸と一貫性があれば採用ブランディングは成果を生む好例です(※2)。
(※2)参考:ダイヤモンド・オンライン「知名度の低い地方企業が採用に勝つためにすべき3つのこと」
成功事例6. メルカリ
メルカリは「メルカリらしさ」を軸にした採用ブランディングで、多くの候補者から共感を集めてきました。同社はミッションやバリューを意思決定の基準として全社員に浸透させ、採用を人事部門だけでなく現場社員も含めた全社的な取り組みとして位置づけています。
特に特徴的なのが、People Brandingチームによる情報発信です。オウンドメディア『mercan』を中心に、社員一人ひとりの働き方や挑戦、失敗も含めたリアルな姿を継続的に発信することで、「自分もここで働けそうだ」という具体的なイメージを醸成しています。
人への投資と従業員体験を重視し、カルチャーを一貫して伝える姿勢が、採用競争力の源泉となっています(※3)。
(※3)参考:d’s JOURNAL「『読者は何を知りたいのか』を考え抜く。メルカリ採用ブランディングのメソッド」
成功事例7. サイボウズ
サイボウズは、採用においてスキルや経験以上に「マッチング」を重視する企業として知られています。同社が掲げる理想は「チームワークあふれる社会をつくる」ことであり、その実現に向けて、企業と個人の期待がバランスよく一致しているかを採用の軸としています。
その判断基準となるのが、Cultureの体現、行動指針に沿った行動、役割を果たす力から構成される独自の人材要件です。選考では一方的な評価ではなく対話を通じて、「サイボウズでその人らしく働けるか」を丁寧に確認します。
価値観や行動の一致を重視する姿勢が、長期的な活躍と定着につながる採用ブランディングを支えています(※4)。
(※4)参考:サイボウズ「採用で大切にしていること」
成功事例8. エイベックス
エイベックスは、第2新卒を対象にした独自の「“志”ポテンシャル採用」を通じて、採用ブランディングを強化してきました。経験や専門性よりも、個人が大切にしている価値観や将来への志に着目し、職種を限定しないオープンポジションで採用を行う点が特徴です。
実際に入社した社員は、異業種で培った強みや関心を生かしながら、新たな領域に挑戦しています。こうした社員のリアルなストーリーを発信することで、「残りの20代をどう過ごしたいか」という問いを候補者に投げかけ、共感を喚起しています。
個人の想いと企業の方向性を重ね合わせる姿勢が、エイベックスらしい採用ブランディングを形づくっています(※5)。
(※5)参考:エイベックス「残りの20代をエイベックスで過ごすという選択」
成功事例9. 第一カッター興業
第一カッター興業は、社会インフラの維持・再生を担う自社の仕事を「インフラクレンジング」と再定義し、採用ブランディングを含むリブランディングに取り組みました。中期経営計画の策定を機に、「社会に不可欠な仕事であること」「現場で働く人の誇り」を明確に言語化し、従業員有志とともに会社のあるべき姿を描いた点が特徴です。
経営トップ自らが使命感や将来像を語り、現場の声を重視する文化を発信することで、建設業にありがちなイメージを刷新しています。「格好いい仕事」「社会を支えるエンジニア集団」という軸を打ち出し、人を大切にする姿勢を採用ブランディングへとつなげています(※6)。
(※6)参考:PR TIMES「世界でも宇宙でも『第一』に呼ばれる会社へ——中期経営計画とリブランディングを紐解き見えてくる、第一興業カッターの『あるべき姿』とは」
成功事例10. 花王グループカスタマーマーケティング
花王グループカスタマーマーケティングは、Z世代への認知拡大と購買促進を目的に、インフルエンサーマーケティングを本格導入しました。スタートアップのNateeと組み、SNSと店頭を連動させた施策を展開した点が特徴です。
成果の鍵となったのは、商品理解からメッセージ設計、購買導線までを徹底的に詰める「細かすぎるほどの設計力」と、企業・代理店・クリエイターの三位一体の連携でした。オンラインの話題化だけで終わらせず、実店舗での購買行動まで見据えた設計により、売上増加を実現しています。
新しい手法にも本気で向き合う姿勢が、企業ブランドとマーケターの価値を高める採用ブランディングにもつながっています(※7)。
(※7)参考:FastGrow「花王グループカスタマーマーケティングのマーケターが、インフルエンサーマーケティングでも成果を生む──大企業を支えたスタートアップの”細か過ぎる提案”とは」
成功事例11. 日本マクドナルド
日本マクドナルドでは、アルバイト採用においても「採用ブランディング」を重視し、応募数の向上と定着率改善を実現してきました。同社が強調するのは、求人広告だけで人を集めるのではなく、店舗の雰囲気や働くスタッフ、接客姿勢といった現場そのものが採用ブランドを形づくるという考え方です。
まず労働環境を整え、スタッフが誇りを持って働ける状態をつくったうえで、応募者が知りたい情報と企業が伝えたい価値を一致させた広告を発信しています。現場力を軸にした一貫した採用ブランディングが、「ここで働きたい」と思わせる動機づくりにつながっています(※8)。
(※8)参考:HITO Manager「店長スキルアップ塾 バイト採用においても必須の採用ブランディングとは?広告を変えて応募数UPを実現!」
成功事例12. トヨタ自動車
トヨタ自動車は、「talentbook」を活用し、社員一人ひとりのストーリーを軸にした採用ブランディングを推進しています。
背景にあったのは、「モビリティカンパニー」への転換に伴い、多様なキャリア人材を採用するなかで、「企業名は知っているが、働く姿が見えない」という課題でした。そこで、職場の雰囲気や価値観、ソフトウエア開発の実態などを社員の言葉で発信し、共感を生む設計へと転換しました。
結果として、社内でも採用への当事者意識が高まり、「全員採用担当」と言える文化が醸成されました。企業理念と現場のリアルを結びつけた発信が、トヨタらしい採用ブランディングを形づくっています(※9)。
(※9)参考:Business Insider「トヨタがtalentbookと始めた『社員主体の採用ブランディング』の効果とは」
成功事例13. ADKホールディングス
ADKホールディングスは、「候補者を選ぶ」採用から「候補者に選ばれる」採用へと発想を転換し、ファン化を軸にしたタレント・アクイジションを推進しています。同社が重視しているのは、内定者だけでなく、選考を通じて接点を持ったすべての人に「歓びの体験」を届けることです。
新卒採用では、就職活動に役立つ思考法や自己表現力を育てるプログラムを実施し、中途採用では現場マネージャー主導のダイレクトスカウトを導入しています。さらにリファレンスチェックを活用し、価値観や協働スタンスまで含めたマッチング精度を高めています。
採用を組織開発の一部と捉え、長期的な関係構築を目指す姿勢が、ADKホールディングスの採用ブランディングを支えています(※10)。
(※10)参考:back check「【岡野千速】マッチングがより重要になる“採用3.0”の時代へ ADKホールディングスの採用戦略は『ファン化』がキーワード」
成功事例14. 三井住友銀行
三井住友銀行は、社員と企業が「選び・選ばれる関係」であり続けることを目指し、2023年に人財ポリシーを制定しました。
「プロフェッショナル」「チームワーク」「挑戦」を社員に求める姿勢として明確に打ち出す一方、「自分らしさの表現」や「成長機会の提供」を企業の責任としてコミットしています。採用スローガンには「挑戦者よ、世界を揺らせ」を掲げ、失敗を恐れず挑戦する姿勢を評価する文化を発信しています。
強固な顧客基盤や多様なキャリアフィールドを背景に、社会に大きな影響を与える仕事に挑める点を訴求することで、挑戦意欲の高い人材とのマッチングを実現しています(※11)。
(※11)参考:SMBC RECRUITING SITE「採用責任者からのメッセージ」
【成功事例から学ぶ】採用ブランディング戦略のポイント
採用ブランディングの成功事例を紐解くと、成果を生み出している企業には共通する考え方や取り組みが見えてきます。ここでは、実際の事例から導き出した、採用ブランディングを成功に導くための戦略的なポイントを整理します。
企業文化・社員をメディア化し、共感を呼ぶ
採用ブランディングでは、企業文化や社員一人ひとりを「発信主体=メディア」と捉える視点が重要です。制度や数字だけでは伝わらない価値観や働き方は、現場で働く社員の言葉や行動を通じてこそリアルに伝わります。
社員インタビューやプロジェクト事例、日常の業務風景などを継続的に発信することで、求職者は企業で働く姿を具体的にイメージできるようになります。その結果、共感を軸とした応募や入社後のミスマッチ防止にもつながります。
自社独自の魅力で認知度を拡大する
採用市場で選ばれる存在になるためには、他社と比較した際に際立つ「自社独自の魅力」を明確にする必要があります。事業内容や待遇だけでなく、企業が大切にしている価値観や挑戦できる環境、社員が成長できる機会などを具体的に言語化することが重要です。
独自性のあるメッセージを一貫して発信し続けることで、企業の認知度は徐々に高まり、求職者の記憶に残る採用ブランドを形成できます。
経営陣の協力を得る
採用ブランディングを全社的な取り組みにするためには、経営陣の理解と協力が欠かせません。経営層が採用戦略の意義を明確に認識し、自らの言葉でビジョンや価値観を発信することで、社内外へのメッセージに説得力が生まれます。
また、経営陣が関与することで、採用は人事部門だけの施策ではなく、企業成長を支える重要な経営戦略として位置づけられます。
適切な発信手法・採用ツールを選定する
採用ブランディングでは、「誰に、何を、どう伝えるか」を明確にした上で、最適な発信手法やツールを選定することが重要です。
若年層にはSNSや動画コンテンツ、専門職や中途採用には採用特設サイトや専門メディアなど、ターゲットに応じた使い分けが求められます。手法ありきで選ぶのではなく、伝えたい価値を軸に設計することで、情報の到達率と共感度を高められます。
採用活動の一貫性を保つ
採用ブランディングの効果を高めるには、採用活動全体で一貫したメッセージを発信することが不可欠です。求人広告や採用ページ、面接時の対応、内定後のフォローまで、トーンや価値観が統一されていることで、求職者の信頼感が高まります。
採用チーム内で共通の方針や認識を共有し、定期的に見直す体制を整えることで、長期的に強い採用ブランドを築くことができます。
【実践】採用ブランディングを成功に導く7Step
採用ブランディングは、単発の施策ではなく、現状分析から情報発信、効果検証までを一貫して行う戦略的な取り組みです。体系的な手順を踏むことで、自社に最適なブランドを構築し、求める人材の獲得へと結びつけることができます。
ここでは、採用ブランディングを成功に導くための実践的な7つのステップを解説します。
Step1:採用活動の目的・ゴールを決める
採用ブランディングを始めるにあたり、最も重要となる土台作りが、採用活動全体の「目的」と「ゴール」を明確に設定することです。単に「応募数を増やしたい」といった漠然とした目標ではなく、「〇年後に、企業理念に強く共感する人材を〇名採用する」「入社後3年以内の定着率を〇%に引き上げる」といった具体的な目標を定める必要があります。この目標は、企業の経営戦略や事業計画と深く結びついていなければなりません。
例えば、事業拡大のために特定のスキルを持つ人材が必要であれば、そのターゲット層に響くようなブランドメッセージが必要になります。目標設定が曖昧だと、その後のブランドコンセプト策定や施策の選定、効果測定のすべてがブレてしまい、時間とコストを浪費してしまうでしょう。
採用ブランディングは、効果が出るまでにかなりの時間を要する取り組みです。初期の段階で経営層や関連部門と連携し、長期的な視点に立った明確なビジョンと達成目標を共有することが成功への第一歩となります。この目標設定を通じて、採用活動が企業経営にどう貢献するのかを言語化し、全社的な協力体制を築くための共通認識を生み出すことが不可欠です。
Step2:求める人物像(ペルソナ)を明確にする
採用活動の目的とゴールが定まったら、次にその目標達成に必要不可欠な人材像、すなわち「採用ターゲット」を明確にします。採用ブランディングにおいては、このターゲット像をさらに掘り下げ、1人の具体的な人物像として描く「ペルソナ設定」が非常に有効です。
年齢・職種・学歴といった基本的な属性情報だけでなく、どのような価値観を持ち、どんなキャリア志向があり、何にやりがいを感じるのか、そして自社に対してどのような疑問や期待を抱いているのか、といった内面的な要素まで深く具体的に設計します。このペルソナは、「この通りの人材しか採用しない」という選抜の基準ではなく、採用担当者や現場の社員、さらには経営層を含む社内全体が、求職者に対して共通の認識を持ち、一貫したメッセージを発信するための「基準」として機能します。
ペルソナを設計する際には、経営戦略に基づいた人材像の設定はもちろんのこと、現時点で社内で活躍しているハイパフォーマー社員の分析データや、競合との差別化ポイント、さらには「MUST(必須条件)」「WANT(あれば良し)」「NEGATIVE(避けるべき条件)」といった項目を整理して検討することで、より実態に即した、精度の高い人物像を描き出すことが可能になります。
Step3:競合分析を行い、自社のポジショニングを把握する
自社が採用市場でどのような立ち位置にあるのかを客観的に把握することは、採用ブランディングの差別化戦略の土台となります。このステップでは、自社だけでなく競合他社の採用活動を深く分析する「競合分析」を行います。特に、採用ブランディングにおける競合とは、同じ業界の企業だけでなく、採用ターゲットとする求職者が「比較検討のテーブルに乗せる」あらゆる企業を指します。
具体的には、競合企業の採用コンセプト、採用サイトのデザインやコンテンツ、SNSでの情報発信の傾向、イベントや説明会の内容、そして何より求職者や社員からのクチコミといった情報を収集し、比較検討します。これにより、競合が強く訴求している魅力と、自社がまだ十分に伝えられていない潜在的な強みや弱みを明確にすることができます。
この分析を通じて、自社が競合に対して優位に立てる差別化ポイント、すなわち「自社独自のポジショニング」を把握することが目的となります。このポジショニングが明確になることで、次のステップで言語化する「採用コンセプト」の方向性が定まり、ターゲットに刺さるメッセージづくりへと繋がります。
Step4:自社の強み・魅力を洗い出す
競合分析を通じて市場におけるポジショニングを把握した後は、いよいよ自社の内側にある強みや魅力を客観的に洗い出す作業に入ります。このステップは、採用ブランディングにおいて核となるメッセージの源泉を見つけるために不可欠です。ここでは、仕事内容、働き方、独自の職場風土やカルチャー、報酬・評価制度、福利厚生、そして社員が感じるやりがいや貢献実感を、様々な角度から客観的に整理する必要があります。
特に重要なことは、採用担当者や経営層が考える「理想の魅力」だけでなく、現場で働く社員へのヒアリングやアンケートを通じて得られた「リアルな声」に耳を傾けることです。これにより、求職者が最も知りたいであろう「入社後のリアル」に近い情報を得ることができます。また、自社の強みとして打ち出せる要素は、単に「給与が高い」といった条件面だけでなく、「なぜその事業を行っているのか」という企業理念や、「どのような価値観を大切にしているのか」という文化的な側面も含みます。
これらを明確に言語化し、潜在的な求職者にとって最も魅力的で、かつ競合他社にはない「独自性」のある要素を特定することが、このステップの最終目標となります。
Step5:採用コンセプトと核となるメッセージを作成する
これまでの分析ステップ(自社・競合分析、ペルソナ設定)で得られた情報を統合し、自社が求職者に伝えるべき「核となるメッセージ」を、採用コンセプトやスローガンの形で言語化します。採用コンセプトは、「自社で働くことの意義」を明確に伝え、その後の採用活動全般に一貫性を持たせるための軸となるものです。
メッセージを作成する際は、企業のミッション・ビジョン・バリューといった根幹の理念に立ち返り、自社が社会に対して提供したい価値と、求職者が働くことで得られる経験を結びつける視点が不可欠です。また、理念をそのままコピーとするのではなく、「設定したターゲットに響く言葉か」「他社にはない自社の強みを的確に表せているか」「誰にでも理解できるほどシンプルか」といった複数の観点から洗練させていく必要があります。
この採用コンセプトは、採用サイトのメインメッセージや求人広告のキャッチコピー、社員が採用面接で語る言葉に至るまで、すべての発信内容の土台となります。一貫性のある力強いコンセプトを策定することが、求職者の共感を醸成し、ブランドを強固にする鍵となります。
Step6:メッセージに合った発信手法と採用ツールを選定する
採用コンセプトと核となるメッセージが策定されたら、それを最も効果的にターゲット層に届けるための「情報発信手段」と「採用ツール」を選定します。
重要なことは、策定したペルソナが日頃どのような媒体を通じて情報収集を行っているかを考慮し、その接点に合わせて手段を使い分けることです。採用サイトを核としつつも、就職意欲の高い層が集まる求人メディア、リアルな社内の雰囲気を伝えられるSNSや採用ブログ、企業の魅力を視覚的に訴求できる動画メディア、そして直接的な体験を提供できるイベントやインターンシップなど、複数の手段を組み合わせた多角的なアプローチが有効です。
ただし、すべての媒体に手を広げるのは運用工数の面で非効率であるため、効果、コスト、そして自社の運用リソースのバランスを考慮し、最も注力すべきプラットフォームを2〜3個程度に絞り込むことが望ましいでしょう。また、この段階では従業員を巻き込み、採用コンセプトを丁寧に共有することで、SNS発信やリファラル採用など、社員が関与するあらゆる接点での情報の一貫性を担保することが、ブランドの信頼性を高める上で非常に重要となります。
Step7:継続的な情報発信と効果測定を行う
採用ブランディングは、施策を実行して終わりではなく、継続的な情報発信と効果測定、そして改善を繰り返すことで初めて成果が生まれます。施策を実行する際には、企業紹介コンテンツや社員インタビューなどを通じて、実態に基づいた魅力を誠実に発信し続けることが重要です。
その一方で、過去の施策データを分析し、採用サイトの導線改善や発信方法の見直しといった既存施策の軌道修正も同時に行う必要があります。さらに、施策の効果を客観的に測るため、応募数、内定受諾率、採用サイトへの訪問数といった定量指標を設定し、その変化を定期的に把握します。また、SNSでの言及数やフォロワーの推移、投稿への反応といった「定性的な変化」も確認することで、求職者の認知や企業イメージがどのように変化しているかを評価します。
これらの定量・定性データに加えて、候補者へのヒアリングや従業員の発信内容から、社内外におけるブランド浸透の度合いを分析し、次の改善サイクルへとつなげます。採用ブランディングは長期的な取り組みであるため、地道な分析と継続的な軌道修正を行うための体制を整えることが、成功の最終的な鍵となります。
採用ブランディングに役立つ5つのツール
採用ブランディングを効果的に進めるには、目的やターゲットに合ったツール選定が欠かせません。情報発信の手段や接点を最適化することで、企業の魅力はより伝わりやすくなります。ここでは代表的な5つのツールを紹介します。
採用特設サイト
採用特設サイトは、求職者が企業理解を深めるための中核となるツールです。企業のビジョンやミッション、事業内容だけでなく、具体的な仕事内容やキャリアパス、福利厚生まで丁寧に紹介することで、入社後の姿をイメージしやすくなります。
さらに、社員インタビューやメッセージを掲載することで、制度だけでは伝わらない企業文化や雰囲気をリアルに届けることができます。情報が整理された特設サイトは、応募意欲を高めるだけでなく、求職者が自分に合った企業かを判断する重要な材料になります。
動画プラットフォーム
採用ブランディングを強力に推進する上で、動画プラットフォームの活用はもはや欠かせない要素となっています。YouTubeに代表される動画メディアは、テキストや静止画では伝わりにくい企業の「雰囲気」や「働くリアルな姿」を、視覚的・聴覚的に短時間で深く訴求できるという圧倒的な強みを持っています。特に、価値観の多様化が進むZ世代の求職者に対し、彼らが日常的に接しているメディアを通じてアプローチできる点は大きな利点です。
経営者の熱いメッセージ、部署ごとの業務紹介、オフィスの様子、そして実際の社員のインタビュー動画など、コンテンツの選択肢は非常に幅広く、企業の魅力を多角的に伝えることが可能です。この「人間味のある」情報発信は、求職者に親近感を生み、企業への共感を醸成する上で非常に効果的です。
ただし、動画制作には一定の費用と手間がかかるため、採用戦略の中で「誰に」「何を」「どのように」伝えたいのかという目的を明確にし、採用コンセプトと一貫した動画を計画的に制作することが重要となります。単に見栄えの良い動画ではなく、入社後のギャップを生まない「誠実な情報発信」を意識し、ブランディングの軸をぶらさずに運用することで、質の高い母集団形成に貢献する強力なツールとなるでしょう。
SNS
X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、LinkedInといったSNSは、採用ブランディングにおいて、求職者との接点を多様化し、親近感を醸成するための非常に有効な手段です。特に新卒採用においては、彼らの情報収集の主戦場であることから高い有効性を発揮します。
SNSの最大のメリットは、「リアルタイム性」と「インタラクティブ性」にあります。企業の日常やイベントの様子をタイムリーに発信することで、採用ページや求人広告の情報では伝わらない、社内の温度感や人間味を届けることができます。さらに、コメント機能などを活用することで、求職者とカジュアルかつ双方向のコミュニケーションが可能となり、企業に対する心理的なハードルを下げる効果が期待できます。また、投稿に対する反応を細かく分析することで、どのようなコンテンツがターゲットの関心を引くのかを把握し、発信内容のPDCAを回すことができる点も魅力です。
一方で、社員や求職者がクチコミサイトやSNSに企業の印象を自由に投稿できるため、企業イメージが第三者によっても形成されるという側面も理解しておく必要があります。成果を得るには、継続的に質の高いコンテンツを発信し、フォロワーを増やし続ける運用努力と、企業イメージを戦略的に管理する意識が不可欠です。一貫性のあるメッセージを継続的に発信することで、確かなブランドイメージを築き上げましょう。
採用イベント・説明会
採用イベントや説明会は、企業と求職者が直接コミュニケーションを取れる貴重な機会です。対面イベントでは、企業の価値観や働く人の空気感を直接伝えられるため、求職者の理解度や共感度を高められます。
加えて、イベントの企画から集客、実施後のフォローまでを一元管理できるツールを活用することで、効果検証や改善もしやすくなります。近年はオンライン説明会やウェビナーを取り入れることで、場所に縛られず幅広い層へアプローチできる点も大きなメリットです。
採用プロモーションコンテンツ
採用プロモーションコンテンツは、企業の魅力を視覚的・感覚的に伝える手段として有効です。企業紹介動画や社員インタビュー、オフィスツアー動画などを活用することで、求職者は働く環境や人の雰囲気を具体的にイメージできます。
これらのコンテンツを採用サイトや求人媒体、SNSと連動させて発信することで、より多くの求職者に情報を届けることが可能です。一貫したメッセージ設計を行うことで、企業のブランド価値を高め、採用活動全体の質を向上させられます。
採用ブランディングがもたらす5つのメリット
採用ブランディングへの取り組みは、単なる応募者の増加に留まらず、企業経営に直結する多岐にわたるメリットをもたらします。ここでは、押さえておくべき主要な5つのメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
採用ミスマッチを防ぎ、定着率が向上する
採用ブランディングの最大のメリットは、採用ミスマッチの大幅な減少と、それに伴う定着率の向上です。
採用ブランディングによって、求職者は入社前に企業の理念・文化・価値観・実際の働き方などを正確に理解することができます。そのため、「思っていたのと違った」という認識のずれが起こりにくくなります。特に、早期離職の多くは、企業の価値観や職場の雰囲気に対する期待値と現実のギャップから生じます。ブランディングによってこのギャップを極力小さくすることで、入社後に高いエンゲージメントをもって長く活躍できる人材の定着が期待できます。
自社の「らしさ」を包み隠さず伝えることは、短期的な採用成功以上に、組織の長期的な安定に貢献するのです。
質の高い母集団形成を形成できる
採用ブランディングは、単に応募者数を増やす「応募数の拡大」だけでなく、「母集団の質」を飛躍的に高める効果をもたらします。
採用ブランディングのプロセスでは、自社の核となる価値観や理念を明確にし、それを求職者に対して一貫したイメージとして発信します。これにより、企業のメッセージに強く共感し、「ここで働きたい」と強く志望する人材が自然と集まってくるようになります。つまり、自社の採用コンセプトやペルソナに合致した人材からの応募が増加し、選考に進む候補者1人1人の入社意欲と企業とのマッチング度が向上します。
結果として、採用後の活躍確度が高く、企業文化の発展に貢献する「質の高い」人材の獲得が実現しやすくなります。
競合他社と明確に差別化できる
採用ブランディングの核となる作業は、「自社の魅力を明確に言語化し、他社にはない独自性を際立たせること」です。
採用ブランディングは、給与や福利厚生といった表面的な条件だけでなく、「なぜその事業を行っているのか」という企業理念や、そこで働く人々の価値観、独自の組織文化といった、他社が容易に真似できない深層的な要素を明確にして発信します。特に知名度の低い中小企業にとっては、「そもそも認知されていない」という課題を打破し、求職者に「この会社は自分に合うかもしれない」という独自の立ち位置を確立する上で、極めて強力な武器となります。
自社の強みを客観的に分析し、採用ターゲットにとって魅力的なメッセージとして打ち出すことで、求職者に対して競合との明確な違いを認識させ、最終的に自社を選んでもらう理由を育てていくことができるのです。この独自の魅力こそが、景気変動や競合の動向に左右されにくい、安定した採用活動の基盤となります。
採用コストを削減できる
一見すると、採用ブランディングは時間と工数がかかる取り組みに思えますが、中長期的に見ると採用活動にかかる総コストは大幅に削減されます。
その理由は、「無駄なコストの見直し」にあります。採用ブランディングに取り組む過程では、ターゲットや採用コンセプトを明確にします。これにより、これまで効果が不明確だった求人広告やイベントへの参加を見直すことができ、無駄なコストを削減できます。さらに、自社と価値観の近い人材が集まるため、選考途中の辞退や内定辞退、そして入社後の早期離職も減少するでしょう。特に早期離職は、採用にかけたコストだけでなく、教育コストや組織への負の影響も大きいため、これを防げる効果は絶大です。
ブランディングによって築かれた信頼と共感は、コスト効率の高い採用チャネルを育成する土壌となるのです。
社員のエンゲージメントやモチベーションが上がる
採用ブランディングは、社外の求職者だけでなく、社内にいる既存社員に対しても非常にポジティブな影響をもたらします。
採用活動を通じて自社の理念、ビジョン、ミッションといったアイデンティティを改めて整理し、言語化する過程は、社員が自社の存在意義や魅力を再認識する絶好の機会となります。これによって、社員1人1人のエンゲージメントが向上するでしょう。採用情報の発信に社員が関わる機会が増えることで、彼らは自社への誇りや組織への貢献意欲が高まります。
また、理念に強く共感して入社してきた「質の高い」新しい人材は、高いモチベーションと熱意をもって業務に取り組むため、組織全体に良い影響を与え、既存社員の刺激ともなります。
採用ブランディングの3つのデメリット
採用ブランディングは多くのメリットをもたらしますが、その効果を享受するためには、企業側が覚悟を持って取り組むべきいくつかの課題やデメリットが存在します。ここでは、押さえておくべき3つのデメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
企業一丸となって取り組む必要がある
採用ブランディングは、採用担当者や人事部だけで完結できる施策ではありません。企業が外部に発信する「理想のイメージ」と、現場で働く従業員が日々体験している「実態」との間に少しでも乖離があると、求職者はすぐにその矛盾を察知し、ブランドへの信頼は崩壊します。
特に、クチコミサイトやSNSなどで個人の体験が容易に拡散される現代において、この「実態との一貫性」は極めて重要です。そのため、採用ブランディングを推進する上では、経営層が旗振り役となり、全従業員が自社の理念や採用コンセプトを理解し、日々の業務や対人コミュニケーションの中で体現することが求められます。
全社的な認識の統一と協力体制の構築が必要となり、これは組織としての大きなエネルギーを要するということを押さえておきましょう。
効果を実感できるまでに時間がかかる
採用ブランディングは、即効性のある短期的な施策ではありません。
企業のイメージやブランドは、求人広告を一本出したからといって、一朝一夕で形成されるものではなく、継続的かつ一貫性のある情報発信と、地道な改善活動を積み重ねる中で、徐々に求職者の心の中に育っていくものです。そのため、施策を実行してから応募数や定着率といった具体的な成果を定量的に実感できるようになるまでには、少なくとも2〜3年といった中長期的な時間が必要とされています。
短期的な成果を求めてメッセージを変えたり、場当たり的な情報発信をしたりすると、かえってブランドイメージを損なうリスクがあります。そのため、経営層や関係者に対して手間と時間を要する「長期的な投資」であるという前提をあらかじめ共有し、理解を得ておくことが重要なポイントです。短期的な目標達成だけにとらわれず、粘り強く継続する姿勢が求められます。
運用工数がかかる
採用ブランディングは、一度コンセプトを策定すれば終わりではなく、数年単位で継続的に取り組む運用型の施策です。
採用ブランディングの軸を定めた後も、採用ページや採用ブログ、SNSなど多様なチャネルでの情報発信、社員を巻き込んだコンテンツ制作、求職者との接点におけるブランド表現の徹底、そして最も重要な効果測定と改善のサイクルを回し続ける必要があります。
これらの運用を安定して行うためには、専任の担当者を配置するなど、一定の人的・時間的リソースを確保する必要があります。短期的な成果が出にくい中で、継続的に運用工数をかけ続けられるかどうかが、採用ブランディングの成否を分ける大きな課題となります。
採用ブランディングに関するよくある質問(FAQ)
採用ブランディングに取り組む際、「自社に本当に必要か」「どの企業に向いているのか」といった疑問を持つ担当者も少なくありません。最後に、採用担当者からよく寄せられる質問に対して、わかりやすく回答します。
中小企業は採用ブランディングを行うべき?
中小企業こそ、採用ブランディングに積極的に取り組むべきだといえます。知名度や待遇面で大企業と競争するのは難しい一方で、企業の理念や働き方、社員同士の距離感といった魅力は中小企業ならではの強みです。
採用ブランディングを通じて価値観やビジョンを明確に発信することで、共感した人材が集まりやすくなり、採用後のミスマッチ防止にもつながります。SNS活用や社員インタビューの発信など、小さく始められる施策も多く、結果として定着率向上も期待できます。
採用ブランディングが向いている企業は?
採用ブランディングは幅広い業界で有効ですが、特に効果を発揮しやすいのは人材不足が深刻な労働集約型の企業です。SES業界や飲食、介護、タクシー、接客・販売業界などでは、給与や条件だけでの差別化が難しく、採用競争が激化しています。
こうした企業ほど、理念や仕事のやりがい、職場の雰囲気などを丁寧に伝えることが重要です。自社ならではの魅力を言語化し発信することで、条件面だけでは動かない人材との出会いにつながります。
おわりに
本記事では、採用ブランディングの基礎知識から具体的なメリット・デメリット、実践的な7ステップ、そして詳細な成功事例14選まで網羅的に解説してきました。
労働人口の減少と求職者の価値観が多様化する現代において、企業が自社の理念や魅力を言語化し、一貫性をもって発信していく採用ブランディングは、採用競争を勝ち抜いて企業を成長させるための必須戦略です。特に、採用ミスマッチを防ぎ定着率を向上させる効果や、採用コストを削減する効果は、組織の持続可能性に必ず直結します。
本記事でご紹介した成功事例や、具体的な実施手順である「7Step」を参考に、まずは自社の現状分析や採用コンセプトの策定に着手してみてください。長期的な視点をもって「実態に基づいた誠実な発信」を継続することが、優秀な人材の獲得への最短ルートとなります。
新卒採用の強化をご検討の採用担当者様は、事例でも活用されていた「ワンキャリア」のように、早期の優秀層との接点拡大や信頼性の高いクチコミデータ収集に役立つツールのご利用もぜひご検討ください。

