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採用戦略の立て方|効果的な7つのフレームワークと立案の流れを解説採用戦略

採用戦略 defer

目次

    採用活動を効果的に行うには、計画的な戦略が欠かせません。ここでは、採用戦略の定義や重要性が高まっている背景について解説します。

    採用戦略の定義

    採用戦略とは、単に人を採用するための活動ではなく、自社の経営戦略や人事課題と連動した、より高次の計画や設計のことを指します。

    たとえば「営業職を5名採用する」といった目標設定にとどまらず、「なぜその職種が今必要なのか」「どのようなスキルや価値観を持つ人材が自社にフィットするのか」「候補者にどんな手段でリーチすべきか」など、採用の背景や手段までを含めて体系的に整理するのが特徴です。

    つまり、採用戦略は「誰を、いつ、どのように採用するか」を明確にし、最適な採用チャネル(例:SNS、ダイレクトリクルーティングなど)や施策を選定するための指針ともいえます。

    採用戦略が重要視されている背景

    企業が優秀な人材を確保し続けるためには、計画的で柔軟な採用戦略が欠かせません。とくに近年は、社会構造や求職者の意識が大きく変化しており、それに対応した戦略設計が求められています。まずは、その背景となる4つの要因を見ていきましょう。

    労働人口の減少

    日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口は減少の一途(いっと)をたどっています。1995年に約8,700万人だった労働人口は、2020年には約7,500万人台まで落ち込みました(※1)。これは一時的な景気変動ではなく、不可逆的な人口構造の変化です。

    女性や高齢者の労働参加は進んでいるものの、主力世代の不足を補いきれていないのが現状です。このような状況下では、人材の確保がますます困難になることが見込まれ、企業は採用活動を長期的・戦略的に設計する必要性に迫られています。

    (※1)参考:総務省「第1部 特集 情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~

    人材獲得競争の激化

    有効な求人倍率が1.2倍前後の状態が続くなか(※2)、企業間での人材獲得競争が激しくなっています。もはや「求人を出せば人が集まる」時代ではなく、求職者から選ばれる企業になるためには、採用活動そのものをブランディングの一環として見直す必要があります。

    たとえば、企業のミッションやビジョンに共感を得られるような訴求、職場環境や働き方の柔軟性などを可視化することが求められます。

    このような競争環境の中では、従来の手法では対応しきれず、採用戦略のアップデートが欠かせません。

    (※2)参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「事業内容

    働き方や価値観の多様化

    近年では、働く人々の価値観やライフスタイルが多様化しており、テレワークやフレックスタイム、副業などを希望する層が増加しています。

    とくに若年層は、給与や安定性よりも、企業の理念への共感や柔軟な働き方を重視する傾向があります。

    このような背景のもとでは、企業も一方的に条件を提示するのではなく、「どのような価値を提供できるか」「どんな働き方が可能か」といった視点で採用方針を考える必要があります。

    画一的な求人では響かない時代だからこそ、柔軟性と共感性を備えた採用戦略が重要となります。

    採用チャネルや人材サービスの多様化

    従来の求人広告や紹介会社だけでなく、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、SNS活用など、採用チャネルはここ数年で大きく進化しています。

    チャネルごとに強みや得意分野が異なり、たとえば若手層にはSNSが有効である一方、ハイクラス層にはスカウト型が効果的です。

    しかしチャネルが増える一方で、ターゲットとの接点を最適化しなければ、労力ばかりかかって成果につながらないリスクも高まります。多様化したチャネルを適切に選び、目的と手段を明確にした設計が、これからの採用戦略には不可欠です。

    採用戦略を明確にすることで、ミスマッチの防止やコスト削減など多くの利点があります。ここでは、採用戦略を立てるメリットについて解説します。

    自社にマッチする人材の応募が増える

    採用戦略を明確にすることで、企業は「誰に・何を伝えるか」を意図的に設計できるようになります。これにより、自社に関心を持ちやすい層へ効果的にアプローチできるため、応募数の増加が見込めるだけでなく、応募者の質も向上します。

    戦略に基づいたターゲット設定とチャネル選定、訴求メッセージの最適化が組み合わさることで、企業の求める人物像に近い応募者が集まりやすくなります。結果として、「いい人が来ない」という採用課題を解消できる可能性が高まります。

    ミスマッチを避けやすい

    採用戦略では、あらかじめ「どのような人材が自社に合うのか」を明確にし、そのペルソナに合わせて選考プロセスや情報発信を設計します。

    これにより、応募者と企業の間にある認識のズレを最小限に抑えることができ、「入社してみたらイメージと違った」といったミスマッチのリスクを大幅に軽減できます。

    また、選考段階で企業の価値観や職場環境をしっかり伝えることで、入社前の期待値の調整も可能です。結果的に早期離職を防ぎ、教育コストの削減や定着率向上にもつながります。

    採用活動の効率が上がる

    戦略がないまま採用活動を進めると、進行管理が曖昧になり、リソース配分の見誤りやタイミングのずれが発生しやすくなります。

    一方で、採用戦略に基づいてKPI(応募数、書類通過率、内定承諾率など)やマイルストーンを設定すれば、計画通りに進捗(しんちょく)を管理しやすくなり、想定外のトラブルにも迅速に対応できます。

    たとえば、応募数が少ない場合でも早期にリカバリ施策を講じることが可能です。こうした対応力が業務の無駄を減らし、採用全体の効率化と安定した成果につながります。

    採用コストが削減される

    採用活動におけるコストは、求人媒体の掲載料や紹介手数料、面接・対応工数など多岐にわたります。採用戦略があれば、どのチャネルにどれだけ予算をかけるかといった判断がしやすくなり、成果の出にくい施策への無駄な支出を抑えることができます。

    たとえば、自社にとって反応が高い媒体に集中して投資したり、低コストなSNSやリファラル採用を活用したりすることで、限られたリソースでも最大の成果が期待できます。結果として、費用対効果の高い採用が可能となります。

    採用戦略は、目標設定から具体的な実行プランまで段階的に構築していく必要があります。ここでは、立案の基本的な流れについて解説します。

    採用戦略チームの編成

    採用戦略の立案は1人ではなく、チームで進めるべきです。戦略が経営や組織全体に関わる以上、経営層や部門責任者、人事、現場社員など多様な視点を取り入れる必要があります。

    チームには、採用実務の担当者だけでなく、配属先部門や育成を担う担当者も含めると効果的です。戦略が現場で実行可能な内容になるうえ、関係者の当事者意識も高まります。外部の採用コンサルタントやRPO業者を招くのも一案です。

    採用目標の設定

    採用活動の成果を判断するには、明確な目標設定が不可欠です。事業計画や人員計画と照らし合わせて、いつまでに・どの職種を・何名採用すべきかを具体化します。

    加えて、既存の人材配置や今後の異動・退職の見込みなども踏まえて、採用人数やスキル要件を調整しましょう。入社時期や配属先の業務繁忙なども加味し、現実的で整合性のある採用目標を設計することが重要です。

    採用ターゲットの人物像の設定

    採用ターゲットを明確にすることで、アプローチ方法や選考基準が定まり、ミスマッチを防ぎやすくなります。

    具体的には、経歴・スキル・年齢層・勤務地希望などの基本情報だけでなく、価値観や志向性といった定性的な要素にも注目します。

    ペルソナ分析を用いることで、どのような人物がどの媒体で情報を得て、何に魅力を感じるのかが見えてきます。これにより、訴求内容や媒体選定の精度が向上します。

    自社の強みを明確に理解する

    競合他社と差別化するには、自社の強みを言語化して明確に伝えることが欠かせません。ターゲットに刺さるポイントを把握するには、入社1〜2年目の若手社員に理由を聞いてみるのも有効です。

    また、社内で共通認識を持つことで、求人広告や面接で一貫性のあるメッセージを発信できます。企業文化や働き方、スキル習得環境、将来性など、さまざまな切り口から強みを整理し、戦略に活用しましょう。

    採用チャネル・採用ツールの決定

    採用チャネルは、予算や職種、採用難易度に応じて最適なものを選ぶ必要があります。求人媒体、エージェント、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、SNS活用など多様な手法の中から、自社のターゲット層に合うチャネルを選定しましょう。

    費用対効果の観点から、複数の手法を組み合わせて運用するのも有効です。また、採用管理システム(ATS)やチャットボットなどのツールも、効率化を図るうえで活用が求められます。

    採用スケジュールの設定

    スケジュール設計は、計画的な採用を実現するための土台となります。採用開始から入社までのリードタイムを考慮し、逆算してスケジュールを組み立てましょう。

    特に、面接官のスケジュールや意思決定のスピードは選考の進行に大きく影響するため、各部門との連携が重要です。また、万が一計画通りに進まなかった場合の予備プランも用意しておくことで、柔軟な対応が可能になります。

    採用KPIの設定

    採用活動のPDCAを回すには、KPIの設定が不可欠です。応募者数、選考通過率、内定率、内定辞退率、採用単価など、目標(KGI)から逆算して重要指標を設定します。

    KPIは単に数値を追うのではなく、課題の早期発見と改善のための基盤です。KPIツリーやマインドマップを活用して可視化し、関係者間で進捗や成果を共有できる体制を整えておきましょう。

    採用戦略をより効果的に進めるには、フレームワークを活用するのが有効です。ここでは、代表的な7つのフレームワークについて解説します。

    ペルソナ分析

    ペルソナ分析は、理想的な応募者像を具体化するフレームワークです。年齢や性別、職歴、スキルといった基本情報に加え、価値観やキャリア志向、情報収集手段まで細かく設定し、あたかも実在する人物のように描き出します。

    これにより、どのような求人媒体を使えば効果的か、どんな訴求メッセージが響くのかといった判断がしやすくなります。採用活動の軸が明確になり、求人原稿や面接対応などに一貫性が生まれるため、ターゲット人材の獲得精度が高まります。

    ファネル分析

    ファネル分析は、応募から内定・入社までの採用プロセスを段階ごとに分解し、各段階でどれだけの候補者が離脱しているかを可視化する手法です。

    「応募」「書類選考」「一次面接」などのフェーズごとに通過率を設定し、歩留まりの悪いカ所を発見することで改善点を明確にできます。また、採用活動のどの工程に課題があるのかを把握し、適切な母集団形成や選考方法の見直しが可能になります。

    リソースの最適配分にも役立つため、戦略的な採用実施に欠かせません。

    SWOT分析

    SWOT分析は、自社の採用活動を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点から整理するフレームワークです。

    たとえば、「柔軟な働き方ができる」といった強みに対し、「知名度の低さ」が弱みになり得ます。また、「若手育成に力を入れている業界トレンド」は機会となり、「競合の積極採用」は脅威として捉えられます。

    内部要因外部要因
    Strength(強み)Opportunity(機会)
    ・柔軟な働き方制度
    ・成長産業であること
    ・福利厚生の充実
    ・若手育成ブーム
    ・働き方改革の追い風
    ・SNSでの情報発信強化
    Weakness(弱み)Threat(脅威)
    ・企業の知名度が低い
    ・選考に時間がかかる
    ・採用広報が未整備
    ・業界トップの積極採用
    ・採用市場の売り手化
    ・地方勤務への不人気

    内部・外部環境を整理することで、自社にとって最適な採用施策を導き出すことが可能になります。

    4C分析

    4C分析は、求職者の視点で採用活動を設計するためのフレームワークで、「Customer Value(価値)」「Cost(負担)」「Convenience(利便性)」「Communication(対話)」の4要素から構成されます。

    たとえば、企業の成長性や働きがいはCustomer Valueに、選考の手間や転居の必要性はCostにあたります。

    視点採用における意味改善のヒント
    Customer Value(顧客価値)自社で働く価値・魅力(企業の成長性や働きがい)社員インタビューや実績を発信
    Cost(費用)入社の心理的・物理的負担(選考の手間や転居の必要性、待遇・環境の変化)フルリモート可、転居補助の導入など
    Convenience(利便性)応募・面接のしやすさオンライン選考/スケジュール配慮
    Communication(対話)候補者との接点の質(説明会、面接時の対応)面接官トレーニング/説明資料の統一化

    これらを分析することで、応募意欲を高めるポイントや、離脱リスクを下げる工夫が見えてきます。応募から面接、内定までの体験設計に大きく貢献します。

    3C分析

    3C分析は、「Company(自社)」「Customer(求職者)」「Competitor(競合)」の3つの視点から、自社の採用戦略を客観的に検討するフレームワークです。

    自社の強み・弱みを把握し、求職者のニーズを理解しながら、競合企業がどのような採用手法や訴求で人材を集めているのかを分析します。

    要素採用活動での解釈具体的な活用例
    Company(自社)自社の価値・文化・強みと弱み教育制度が手厚い、成長産業、ベンチャー気質
    Customer(顧客)ターゲットとなる求職者のニーズ・行動・関心自由な働き方、キャリアアップ、柔軟性など
    Competitor(競合)他社の採用活動、求人内容、待遇、ブランディング大手は報酬重視、中堅は職場環境を強調など

    この三者のバランスを見ながら、自社の魅力をどこでどう伝えるべきかを整理することで、競合との差別化や採用力の向上につながります。

    STP分析

    STP分析は、「Segmentation(市場の細分化)」「Targeting(狙うターゲットの選定)」「Positioning(市場における自社の立ち位置の明確化)」の3ステップで構成されるフレームワークです。

    採用活動においては、求職者市場を年齢・職種・志向などで細かく分け、そのなかから自社に最も適した層を選定し、何を強みとして打ち出すかを決めます。

    ステップ採用活動への応用例
    Segmentation(市場の細分化)年齢層(20代・30代)、志向(安定志向/挑戦志向)、職種(営業・開発など)
    Targeting(狙うターゲットの選定)25〜30歳の挑戦志向で成長意欲の高い営業職経験者
    Positioning(市場における自社の立ち位置の明確化)「20代でもリーダーポジションを狙えるスピード成長型の企業」

    このような分析を行うことで、的確なメッセージ設計やチャネル選定が可能となり、競争の激しい採用市場で自社の存在感を高めることができます。

    TMP設計

    TMP設計は、「Targeting(採用ターゲット)」「Messaging(訴求内容)」「Processing(採用プロセス)」の3つの要素で構成される採用特化型のフレームワークです。

    まずは採用したい人材の属性や志向を明確に定義し、それに基づいて魅力的なメッセージを作成します。続いて、選考フロー全体でそのメッセージを一貫して伝える設計を行いましょう。

    項目内容例
    Targeting(採用ターゲット)20代後半・営業経験3年以上・自発的なキャリア形成意欲がある人材
    Messaging(採用メッセージ)「若手でも挑戦できる」「3年でマネージャーを目指せる」「自由な働き方」
    Processing(採用プロセス)面談では現場社員の実例を紹介し、オファー面談で成長ロードマップを提示

    このような分析により、ターゲットに対する共感性が高まり、選考の途中離脱やミスマッチのリスクを大きく軽減することができます。

    企業の規模によって適した採用戦略は異なります。ここでは、大企業・中小企業・スタートアップなど規模別の採用戦略の違いについて解説します。

    大企業の採用戦略立案

    大企業は知名度や安定性により応募が集まりやすい反面、ミスマッチや選考途中の辞退が起こりやすい傾向があります。そのため、ブランド力に頼るだけでなく、採用の質を高める工夫が不可欠です。

    たとえば、ターゲットとなる人材のペルソナを詳細に設定し、スキルだけでなくカルチャーフィットを重視した選考設計を行うことが有効です。

    また、企業の魅力をオウンドメディアやSNSで発信し、応募者の共感を引き出す採用ブランディングも効果的です。ATSなどのツールを活用した選考の効率化にも注目が集まっています。

    中小企業の採用戦略立案

    中小企業は採用に使えるリソースが限られる場合が多く、人的・金銭的な制約がネックになります。しかし、ターゲットを絞り込んだ戦略的な採用活動を行えば、十分に競争力を持てます。

    具体的には、必要なスキルや価値観を明確に定義し、ピンポイントで訴求することで無駄な応募対応を減らすことができます。また、求人媒体の選定ではコストパフォーマンスの高いIndeedやWantedlyなどを活用し、露出と費用対効果を両立することが重要です。

    加えて、採用代行や人材紹介などの外部リソースを上手に使うことも成功への鍵です。

    ベンチャー企業の採用戦略立案

    ベンチャー企業はスピード感と柔軟性を武器に成長を続ける一方で、制度の未整備さや知名度の低さが採用のハードルになることもあります。

    そのため、候補者には制度の整備状況を正直に伝えつつ、少数精鋭の環境で得られる裁量の大きさや挑戦できるフィールドを前向きに訴求することが重要です。

    また、会社の将来ビジョンをストーリーとして語り、共感を生むことで「仲間として参画したい」と思わせる工夫が有効です。リファラルやミートアップなど、信頼をベースとした接点作りも採用成功の鍵を握ります。

    スタートアップ企業の採用戦略の立案

    スタートアップでは、企業としての土台が整っていない段階での採用が求められるケースが多く、採用そのものが経営戦略の一部といえます。

    最大の資産は創業者の思いやビジョンであり、それを「顔の見える形」で伝えることが採用広報につながります。SNSでの発信やイベント登壇など、トップ自らが積極的に情報発信を行い、会社の熱量をダイレクトに届けることが求められます。

    明確な役割が定まっていないことも、「自由に形づくる余白がある」とポジティブに転換することで、共感層の獲得につながります。

    採用戦略の効果を高めるには、立案時のポイントを押さえることが重要です。ここでは、戦略を設計する際に意識すべきポイントについて解説します。

    ターゲットの目線で考える

    採用戦略を成功させるには、企業側の視点だけでなく、求職者の立場に立って設計することが不可欠です。ターゲット層がどんな価値観や志向性を持ち、どのような媒体で情報を得ているのかを具体的に理解し、それに合ったチャネル・訴求方法を選定しましょう。

    たとえば、20代の成長志向が強い層には「早期キャリアアップ」の訴求が有効ですが、安定志向の強い層には「働きやすさ」や「定着率」の情報が響きやすくなります。求職者のニーズを見誤ると、広告や選考プロセスが響かず、結果的にミスマッチや離脱につながりやすくなります。

    全社に戦略を共有・実行する

    採用は人事部門だけの仕事ではなく、全社的な取り組みとして進めるべきです。なぜなら、実際に新しく入ってくる人材と関わるのは現場であり、組織全体の理解と協力がなければ、採用戦略は形骸化してしまうからです。

    これを防ぐには、採用の目的やターゲット像、選考基準などを関係部署に事前に共有し、採用活動に対する共通認識を醸成しておくことが大切です。

    特に配属予定の部門や現場社員との連携を強化することで、面接や選考も一貫性を持って進めやすくなり、入社後の定着にも良い影響をもたらします。

    スケジュールやリソースの管理を徹底する

    採用計画は、目標人数や入社時期を設定するだけでなく、それを実現するためのリソース配分とスケジュール管理が伴って初めて機能します。特に中小企業やスタートアップでは、採用担当者が他業務を兼任していることも多く、無理のない進行計画が不可欠です。

    たとえば、求人原稿の作成から面接調整、選考の実施、内定フォローまで、各フェーズに必要な工数を見積もっておくことで、リソース不足による進行遅延を防げます。

    また、繁忙期との重複や面接官の確保状況も踏まえ、柔軟にスケジュールを見直す体制を整えることが重要です。

    採用後の人事戦略と一貫性を持たせる

    採用活動は単なる入口ではなく、育成や配置・評価といった人事全体の流れの出発点です。そのため、採用戦略と人事戦略が一貫していないと、せっかく採用した人材が能力を発揮できなかったり、早期に離職したりするリスクが高まります。

    たとえば、将来の幹部候補を採用したい場合、入社後のキャリアパスや評価制度が明確でなければ、候補者の期待とギャップが生じやすくなります。

    採用段階から育成方針や求める成果像を明示し、それに沿った人事制度やオンボーディング体制を整備することで、人材の定着と成長を促進できます。

    戦略を立てただけでは成果は出ません。ここでは、採用戦略を実行する際の基本的なステップと進行の流れについて解説します。

    実行のための社内体制を整備する

    採用戦略を着実に実行するには、社内での役割分担や情報共有体制の整備が不可欠です。採用は人事部門だけでなく、現場の部門責任者や経営陣も関与する「全社的なプロジェクト」として捉える必要があります。

    たとえば、スカウト送信や選考のスケジュール調整には、営業部門や技術部門の協力が不可欠になることもあります。役割を曖昧にせず、誰が何をいつまでに担当するのかを明確化し、進捗共有の仕組み(定例MTGや採用管理ツールなど)を整えておくことで、施策が止まらず、計画通りに推進できます。

    実際の採用施策の優先順位付けを行う

    採用活動では限られたリソースのなかで数多くの施策を検討・実施する必要があるため、優先順位の設定が重要です。

    「短期での採用人数確保」が目標なら即効性のある手法を、「長期的な人材確保」が目的ならブランディングや新卒採用強化に重きを置く必要があります。緊急度・重要度のマトリクスを使い、KPIに直結する施策から実行することが基本です。

    あわせて、四半期単位などで実行のタイミングを整理したロードマップを作成しておくことで、社内の合意形成も得やすくなり、着実な進行が可能になります。

    募集を行う

    採用施策を決定したら、募集活動を開始します。まず行うべきは、訴求力のある求人票の作成です。

    求めるスキルや人物像は明確にしつつ、自社のビジョンや働く環境、社員の声などを盛り込み、候補者に「自分ごと化」してもらえる内容にすることがポイントです。あわせて、スカウトメールやSNSでの情報発信も重要です。

    候補者に届くメッセージは、パーソナライズされた内容にすることで返信率が大幅に向上します。応募が集まりにくい場合は、媒体の見直しやコンテンツの強化を行い、自社の魅力を最大限に伝える工夫が求められます。

    選考を行う

    選考フェーズでは、ミスマッチを防ぎつつ候補者の意欲を高めるプロセス設計が鍵になります。書類選考や面接では、募集要項で示したスキルや価値観に沿った評価項目を設け、複数の面接官がブレなく判断できる基準を整備しましょう。

    また、転職潜在層へのアプローチとしては、いきなり選考に進むのではなく、カジュアル面談を取り入れるのも有効です。企業への理解を深めてもらうことで志望度が高まり、後の選考プロセスもスムーズに進行しやすくなります。

    面接時の丁寧なフィードバックも候補者の印象を左右する要素の1つです。

    内定と入社後フォローを行う

    内定通知後のフォローは、採用活動の成否を左右する重要なフェーズです。内定辞退を防ぐためには、候補者の不安や疑問に対して迅速かつ誠実に対応することが重要です。

    特にワークライフバランスや入社後のキャリアパス、職場環境といったリアルな情報の提供がポイントです。また、入社後の早期離職を防ぐために、オンボーディング施策もあわせて計画しましょう。

    具体的には、入社前から社内SNSへの参加、入社直後のメンター制度、定期的な1on1などを導入することで、新人が早期に組織へなじみやすくなり、活躍のスピードも高まります。

    実際の結果をもとに採用戦略の改善を行う

    採用活動は「実行して終わり」ではなく、結果を振り返って改善に生かすことが重要です。KPIのデータを収集・分析し、採用プロセスにおけるボトルネックを特定しましょう。

    たとえば、書類通過率が極端に低い場合は求人内容の見直し、内定辞退率が高い場合はオファー内容やクロージングの再設計が必要かもしれません。

    また、選考スピードや面接官対応の質も要因になり得ます。こうした結果を踏まえ、戦略やプロセスを継続的にアップデートすることで、より精度の高い採用体制が構築できます。

    採用戦略には落とし穴も多く、失敗例から学ぶことが重要です。ここでは、よくある失敗とその回避ポイントについて解説します。

    採用ターゲットが明確ではない

    採用活動でよくある失敗の1つが、採用ターゲットが曖昧なまま進めてしまうことです。どんな人物像を求めているのかを明確にしないまま募集をかけると、選考基準がブレてしまい、ミスマッチの人材を採用してしまうリスクが高まります。

    また、現場部門と人事担当者の間で求める人材像にズレがあると、応募者への訴求ポイントも定まらず、応募が集まりにくくなります。

    対策としては、自社のビジョンや事業戦略をもとに、スキル・経験・価値観などの観点から「ペルソナ」を具体化し、関係者間での認識共有を徹底することが重要です。

    KPI設定にズレが生じる

    採用活動ではKPIを設定することが一般的ですが、指標の選定や運用が適切ではないと、施策の成果が見えず、改善が進みません。

    たとえば「応募数」だけを増やすことに注力すると、質の低い応募が増え、選考や定着に支障をきたす可能性があります。また、KPIを設定していても、その達成度を定期的に振り返らずに進めてしまうと、効果検証ができず、次の施策に活かせません。

    採用目的に合った指標を設計し、定期的なモニタリングや分析体制を整えることで、より戦略的な採用が実現できます。

    ターゲットへのアプローチやチャネル設定が不適切

    ターゲット人材に適切な手法でアプローチできていないことも、採用が失敗する大きな要因です。

    たとえば、SNSで情報収集する若手層に対し、紙媒体や従来型求人サイトだけで募集しても届きにくくなります。また、採用サイトの内容が自社目線に偏り、求職者の関心を引けていないケースもあります。

    対策としては、まずターゲット像の情報収集行動や価値観をリサーチし、それに合ったチャネルを選定することが重要です。さらに、チャネルごとに伝えるメッセージを最適化することもポイントになります。

    企業の魅力を十分に伝えられていない

    求職者は複数の企業を比較する中で、より「魅力が伝わる会社」にひかれやすい傾向にあります。そのため、企業のビジョン・カルチャー・キャリア制度・社員の声などを十分に伝えられないと、せっかくの魅力も届かず、他社に流れてしまいます。

    特にミッションや働き方の柔軟性、成長支援制度といった要素は、近年の求職者が重視するポイントです。採用サイトやSNS、動画コンテンツ、インタビュー記事など、複数のコンテンツを活用して「自社で働く魅力」をリアルに発信しましょう。

    情報発信の質と量が、候補者の志望度を大きく左右します。

    実行と改善の繰り返しを怠る

    採用戦略は一度立てたら終わりではなく、実行後の振り返りと改善を繰り返すことで精度が高まっていきます。しかし実際には、忙しさに追われて施策の振り返りが後回しになり、同じミスや非効率な方法が繰り返されてしまうことも少なくありません。

    PDCAサイクルを意識し、各施策の結果を定量的・定性的に検証し、改善案を次回の戦略に組み込むことが重要です。

    たとえば、定期的なKPIレビュー会議や、候補者アンケート、現場フィードバックの収集などを取り入れることで、より実行力と再現性のある採用体制を築くことができます。

    企業が採用戦略をしっかりと策定することで、採用活動の成功につなげた事例は多く存在します。ここではワンキャリアクラウドのサービスを活用して、効果的な採用戦略の実施に成功した3つの企業の事例をご紹介します。

    1. 株式会社アイフル

    株式会社アイフルは、採用ターゲットを明確に設定し、ミスマッチのない採用を実現した事例です。

    特に注目すべきは、職種ごとにペルソナ設計を行い、求職者の志向や行動特性に合わせて求人票や選考フローをカスタマイズしている点です。

    さらに、実際の職場を見学できる制度や動画コンテンツを活用し、応募前の情報開示を徹底しました。こうした施策により、採用後の早期離職率が大きく低下し、社員の定着率と業務成果の両立を実現しています。

    2. 株式会社ファンケル

    株式会社ファンケルは、採用ブランディングを強化し、自社の理念やカルチャーに共感する人材の獲得に成功した企業です。

    求職者向けに社員インタビューや動画コンテンツを積極的に発信し、働き方やキャリア形成、社会貢献活動への取り組みを具体的に伝えています。また、リファラル採用制度を導入し、既存社員のネットワークから自社に合う人材を集める仕組みを構築しました。

    こうした戦略的アプローチにより、志望度の高い応募者が増え、採用後のパフォーマンス向上にもつながっています。

    3. 住友商事グローバルメタルズ株式会社

    住友商事グローバルメタルズは、新卒採用において「選ばれる企業」になることを目指し、企業理解と魅力発信に重点を置いた採用戦略を展開しています。

    具体的には、学生向けにビジネスコンテスト型の選考イベントを実施し、単なる選考を超えて企業との接点づくりを図っています。

    また、入社前から継続的なフォロー体制を敷くことで、入社後のオンボーディングもスムーズに実現しています。戦略的な母集団形成と定着支援の両輪によって、長期的な人材育成に成功している好例といえるでしょう。

    採用戦略の立案〜実行には、ワンキャリアがおすすめ!

    上記の事例のように、自社に合った採用戦略を立案して実行することで、採用活動の効果を大幅に高めることができます。

    でも、「自社にあった採用戦略を立案できるのか」「採用戦略を立案しても実現できるのか」などの不安を抱く人事担当の方も多いでしょう。

    ワンキャリア」では、採用戦略の立案から実行まで企業様を全面的にサポートするサービスを展開しています。学生の口コミなどの豊富なデータの活用や、学生利用率の高さを生かし、ご紹介したような採用戦略立案から実行までのフローを、二人三脚でサポートいたします。

    ぜひサービス利用をご検討いただければと思います。

    この記事では企業の採用活動の軸となる採用戦略について、立案と実行の流れやポイントと注意点、実際の成功事例などをご紹介しました。採用戦略について悩みを抱える各企業の人事担当の方は、ぜひこちらの記事をご参考ください。

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