目次
変化を続ける新卒採用市場において、自社の採用を成功させるためには、最近の新卒採用市場の動向を把握し、それに応じた採用計画を練ることが必要です。
本記事では、新卒採用市場の動向やスケジュール、採用手法、人気業界・職種のトレンドについて解説します。さらに、これらの動向・トレンドを踏まえた2027年卒以降の新卒採用市場の攻略ポイントについても説明します。
2026年卒新卒採用市場の動向
2026年卒の新卒採用市場は、景気回復の兆しや採用意欲の高まりにより活況を呈しています。ここでは、求人倍率の推移や企業規模・業種別の動向を通して、最新の市場状況を解説します。
求人倍率の推移
過去10年間の有効求人倍率を見ると、日本の新卒採用市場は明確な景気変動の影響を受けながら推移しています。平成27年の1.20倍から平成31年の1.62倍まで、景気回復を背景に上昇が続き、企業の採用意欲が旺盛であったことがうかがえます。
しかし、令和2年には新型コロナウイルスの影響で1.18倍まで急落し、就職氷河期以来の低水準に。以降は緩やかな回復を見せ、令和4年には1.31倍に戻りましたが、令和6年以降は再びやや減少傾向にあります。
全体として、景気や社会情勢の変化が求人倍率に直結していることが読み取れ、企業は安定した採用計画を維持するためにも、外部環境の変化を的確に捉えることが重要といえます。
| 年度 | 有効求人倍率(平均) |
| 平成27年 | 1.2 |
| 平成28年 | 1.36 |
| 平成29年 | 1.5 |
| 平成30年 | 1.61 |
| 平成31年 | 1.62 |
| 令和元年 | 1.6 |
| 令和2年 | 1.18 |
| 令和3年 | 1.13 |
| 令和4年 | 1.31 |
| 令和5年 | 1.31 |
| 令和6年 | 1.25 |
| 令和7年8月 | 1.2 |
参考:厚生労働省|一般職業紹介状況(平成27年〜令和7年8月分より)
従業員規模別の求人倍率推移
企業規模別に見ると、近年は大企業よりも中小企業の動きに変化が見られます。従業員が多い大企業では、ここ数年大きな変動はなく、安定した採用状況が続いています。
一方で、小規模企業では採用意欲が高まり、前年よりも求人倍率が上昇しました。これに対し、中堅規模の企業ではこれまで上昇傾向にあった求人倍率が、今回は減少に転じています。規模によって採用活動の勢いに明確な差が生じているのが特徴です。
業種別の求人倍率
業種別に見ると、製造業とサービス業が堅調に推移し、求人倍率が上昇しました。これに対して、流通業や建設業、金融業、情報通信業では減少傾向が見られます。特に流通業では大幅な低下が確認され、業界ごとの人材需要に明確な差が表れています。
全体として、業種によって回復の度合いが異なり、経済活動の再開や人手不足の影響が分野ごとに色濃く反映された結果となっています。
就職活動のトレンド
学生の就職活動はデジタル化が進み、企業との接点も多様化しています。ここでは、売り手市場の背景や大手企業志向、AI活用の広がりなど、近年の就活トレンドを詳しく解説します。
売り手市場
新卒採用市場は依然として「売り手市場」の傾向が続いています。少子化による若年層人口の減少に加え、企業側の人手不足感が強まっていることが背景です。
特に中小企業や地方企業は、大手企業との人材獲得競争が激しく、母集団形成に苦戦しています。そのため、各社が採用スケジュールを前倒しし、学生との早期接点づくりを重視する動きが広がっています。
大手企業人気の傾向
ワンキャリアの「2026年卒 就活実態調査」によると、学生の多くは業界や職種を2〜3つに絞り込んでおり、志望企業はまだ決めきれていない段階です。
実際、「志望企業が未定」と回答した学生が最も多く、次いで「5〜7社」「2〜4社」に絞っている層が続きます。志望企業を決定する時期は、「本選考やインターンシップを通じて徐々に決める」という回答が多く、早期から明確な志望先を固める学生は少数派です。
大手企業への人気は根強いものの、学生は複数の企業を比較しながら慎重に選考を進めている状況です。
生成AIの活用
就職活動における生成AIツールの活用が急速に広がっています。ChatGPTなどを活用している学生は全体の半数を超え、前年調査の約2倍に増加しました。
主な利用シーンは「エントリーシート作成や志望理由の下書き・添削」が最も多く、次いで「自己分析や自己PR文の作成・添削」が続きます。AI活用が一般化することで、学生の情報収集や書類作成の効率化が進み、就活準備の質も向上していると考えられます。
1人当たりのエントリー数
学生の志望先選定の傾向を見ると、企業を一社に絞り込むケースは少なく、複数社を比較しながら活動する傾向が強いことがわかります。志望企業が未定の学生も一定数存在し、選考やインターンシップを通じて志望先を明確にしていく動きが一般的です。
このことから、企業側は採用広報やイベントを通じて早期に接点を持ち、学生の関心を高める工夫が求められます。
学生が重視するポイント:ワークライフバランスの確保
志望企業を選ぶ際に最も重視されているのは「ワークライフバランスの確保」です。前回調査に比べるとやや割合は減少したものの、依然として1位に位置しています。
次いで「企業内の雰囲気がよい」「自分の成長が期待できる」といった項目が上位に入り、職場環境や働きやすさを重視する傾向が強まっています。
新卒採用スケジュールのトレンド
採用開始時期の前倒しや内定までの長期化など、スケジュール面での変化が顕著です。ここでは、2026年卒採用に見られる早期化・長期化の流れについて具体的に解説します。
新卒採用の早期化
近年、新卒採用の「早期化」は一層進行しています。本来の就職活動スケジュールでは、広報解禁日にあたる大学3年の3月1日から採用広報や母集団形成を始めることが基本とされています。しかし、このスケジュールは政府からの要請にすぎず、法的拘束力や罰則は存在しません。
そのため、競合他社よりも早く学生と接点を持つために、実際には多くの企業が解禁日前から採用活動を始めています。学生側もこれに呼応する形で、大学2年の終わり頃から準備を始めるケースが見られ、採用活動全体の開始時期が年々前倒しになっています。
企業にとっては、早期化に対応するために採用計画の見直しや社内体制の調整が必要となっており、限られたリソースを効果的に活用する工夫が求められています。
新卒採用の長期化
採用の早期化が進む一方で、活動期間の「長期化」も顕著になっています。
学生の中には、就職活動を早く始めることで早期に内定を得るケースも増えていますが、企業側は内定を出した後も入社までのフォローを継続する必要があります。したがって、採用活動の開始時期が前倒しになる分、全体の活動期間が長くなっているのが実情です。
結果として、企業は複数学年の採用を同時並行で進めるケースも多くなり、採用担当者の業務負担が大きくなっています。このように、早期化と長期化が同時に進むことで、採用活動の計画性と継続的なフォロー体制の重要性がより一層高まっています。
人気のある業界と職種のトレンド
学生の志望業界や職種は、社会情勢や価値観の変化を反映して年々変動しています。ここでは、業界別の人気動向や文理別の志望職種の傾向について解説します。
業界のトレンド
ワンキャリアの「2027年卒 就活実態調査」によると、2027年卒の学生の間では、「メーカー」志望が圧倒的に多く、全体の3人に1人以上が選択しています。次いで「IT・通信」「コンサル・シンクタンク」が上位に入り、この3業界が特に人気を集めています。
各業界の内訳を見ると、メーカーでは「食品・飲料」、IT・通信では「システム・ソリューション」、コンサル・シンクタンクでは「戦略コンサル」が最も多く選ばれています。いずれの分野も社会的な安定性や将来性が高く、学生が専門知識を活かして活躍できる場として注目していることがうかがえます。
また、業界選定の際に重視されているポイントとして、「自分の能力や専門知識を生かせるかどうか」が最も多く挙げられています。事業内容への関心や成長性の高さを重視する傾向も見られ、学生が自身のキャリア形成と業界特性のマッチングを意識していることが特徴です。
文理別志望職種のトレンド
職種選びにおいても、業界選定と同様に「専門性を発揮できるかどうか」が最も重視されています。2027年卒では、「自分の能力や専門知識を生かせる職種」と回答した学生が4割を超え、前年(26卒)調査時と比べて大幅に増加しました。
一方で、「仕事内容への興味」や「課題解決を通じたやりがい」も引き続き上位にあり、専門性と興味関心の両立を重視する姿勢がうかがえます。
さらに、将来的な転職や起業を視野に入れて就職活動を進めている学生も3人に1人に上り、早い段階から中長期的なキャリア設計を意識する傾向が広がっています。
企業にとっては、採用初期段階からキャリアパスや成長機会を明確に示し、学生に長期的なビジョンを描かせるメッセージ発信が求められます。
新卒採用手法のトレンド
従来の合同説明会やナビサイトだけでなく、新たな採用手法が台頭しています。ここでは、ミートアップやスカウト、AIを活用した支援など、注目の採用手法を解説します。
ミートアップ
ミートアップは、企業と学生がフラットに交流できる少人数制の場として注目を集めている採用手法です。従来の説明会では企業側からの一方的な情報発信が中心でしたが、ミートアップでは社員との対話やグループディスカッションを通して、学生が企業の雰囲気やカルチャーを体感できます。
選考要素がないため心理的ハードルが低く、リラックスした空気の中で自然なコミュニケーションが生まれるのが特徴です。
企業にとっては、理念や働き方、社員の人柄など、求人票だけでは伝わりにくい情報を直接届けられる場となります。
| メリット | デメリット |
| 学生の企業理解が深まり、志望動機の質が向上する | 会場準備や運営に一定のリソースが必要 |
スカウトサービス
ダイレクトリクルーティングは、企業が自ら学生のプロフィールを検索し、スカウトメッセージを送る「攻めの採用手法」として新卒採用でも広がっています。ナビサイト中心の「待ちの採用」では届きにくい層へも直接アプローチでき、売り手市場での母集団形成に効果的です。
学生側も企業からのスカウトを好意的に受け取る傾向があり、関心喚起や志望度の向上に結びつくケースが多く見られます。専用のスカウト媒体を活用するのが一般的で、メッセージの内容やターゲティング精度が成果を左右します。
| メリット | デメリット |
| 狙った人材層に直接アプローチでき、母集団の質を高めやすい | 継続的なメッセージ作成・送信に工数がかかる |
インターンシップ
インターンシップは、学生が実際の業務を体験することで企業との相互理解を深める定番の採用手法です。実務を通して職場の雰囲気や仕事のやりがいを体感できるため、早期の母集団形成やマッチ度向上に効果的です。
2022年の経団連による制度再定義以降、一定要件を満たすプログラムは選考活動に直結できるようになり、「採用直結型インターンシップ」がトレンドとなっています。短期(5日程度)から長期(数週間〜数カ月)まで形式はさまざまで、目的に応じたプログラム設計が求められます。
インターンシップの主な要件
- 就業体験要件: 実施期間の半分以上を職場での就業体験に充てる
- 指導要件: 社員が学生を指導し、終了後にフィードバックを行う
- 実施期間要件: 汎用的能力活用型で5日以上、専門能力活用型で2週間以上
この再定義により、「1dayインターン」は「オープンキャンパス」などに名称変更する動きも広がっています。
| メリット | デメリット |
| 学生との相互理解が深まり、優秀層と早期に関係を構築できる | プログラム設計・準備に手間と時間がかかる |
カジュアル面談
カジュアル面談は、選考とは切り離された「対話」を目的とした学生との交流手法です。カフェやオンラインなどのリラックスした環境で行われることが多く、学生は気軽に企業や業界について質問できます。
企業にとっては、学生の人柄や価値観を自然な会話から把握できる点が魅力で、マッチングの精度向上につながります。就活初期段階の学生とも接点を持ちやすく、採用活動全体の関係構築フェーズを支える重要な施策です。
| メリット | デメリット |
| 学生との心理的距離を縮め、志望度を高められる | 選考に直結しないため、効率が低いと感じられる場合がある |
採用代行
採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)は、採用活動の一部または全体を外部企業に委託する手法です。母集団形成、エントリー管理、面接調整、説明会運営、スカウト送信など幅広く対応でき、リソース不足の企業や短期間で大量採用を行いたい企業に有効です。
人手不足が深刻化するなかで、採用部門の負担を軽減しながら効率的に採用活動を進められる手段として注目されています。さらに、採用戦略立案や効果測定、ツール導入支援まで担う総合型サービスも増加しており、採用全体の最適化にもつながっています。
| メリット | デメリット |
| 採用業務の負担を軽減し、競争力を高められる | 採用ノウハウが自社に蓄積されにくい |
AIを用いた採用支援
AIを活用した採用支援サービスは、採用の効率化と精度向上の両面で注目を集めています。
応募者のエントリー情報を自動でスクリーニングする機能や、動画面接を解析して適性を評価するツール、AIによるマッチング診断など、人的リソースに依存しない新たな仕組みが広がっています。これにより、応募数の多い企業や初期選考の効率化を図りたい企業にとって特に有効です。
さらに、学生の特性や行動履歴をもとに求人をパーソナライズして提案する仕組みも登場しており、候補者との最適なマッチングを実現します。
| メリット | デメリット |
| スクリーニングや適性診断を自動化し、評価の公平性を担保できる | ツール導入や運用に一定のコストがかかる |
2027年卒以降の新卒採用市場の攻略ポイント
市場変化を見据えた採用戦略の再構築が求められています。ここでは、学生行動の変化に合わせたアプローチや採用広報の工夫など、2027年卒以降に向けた具体的な対策を解説します。
学生の動き出しの時期に合わせる
近年の傾向では、多くの学生が大学2年の3月頃から本格的に就職活動の準備を始めることがわかっています。
この時期は、業界研究や企業比較を行う学生が増えるタイミングであるため、企業側も同時期に情報発信を強化することが重要です。
具体的には、オウンドメディアでの発信、インターンシップやオープンカンパニーの企画・集客を早期に進めることで、認知拡大と学生の興味喚起につなげられます。
働きやすさを積極的にアピールする
給与や企業規模よりも、「働きやすさやワークライフバランス」を重視する学生が増えています。
とくに、福利厚生の充実度、リモートワーク制度、フレックスタイム制度の有無などが企業選びの重要な判断材料となっています。
そのため、27卒以降の採用活動では、こうした制度や職場環境を具体的に示し、学生に安心感と共感を与えるアピールが求められます。
オフライン・オンラインの最適化
今後の採用活動では、オンラインとオフライン(対面)の使い分けが鍵となります。近年 記念、説明会ではオンラインを希望する学生が増加しており、効率的な情報収集を重視する傾向が顕著です。
一方で、複数日程インターンシップでは多くの学生が対面を希望しており、興味のある企業に対しては実際に接触し、雰囲気を体感したい学生が多いことがわかります。
企業はコンテンツの目的に応じて開催形式を柔軟に切り替えることが重要です。
攻めのアプローチ(スカウトサービス)
学生の大手志向が続くなか、中小企業や知名度の低い企業は「待ち」の採用では優秀層の確保が難しい状況です。そのため、今後の採用では「攻めのアプローチ」が不可欠です。
具体的には、採用イベントへの積極的な参加に加え、ダイレクトリクルーティング(スカウトサービス)の活用が有効です。企業が自らターゲット学生に直接アプローチし、接点を増やすことで、自社の魅力を効果的に伝えられます。
採用スケジュールの再設計
大学4年の5月末時点で約半数、9月末には9割以上が就職活動を終了しているといわれています。
今後はさらに早期化が進む見込みのため、企業は採用スケジュールを前倒しし、早期充足を意識した計画を立てる必要があります。
たとえば、インターンシップ経由の採用やリクルーター制度の活用によって、優秀層との早期接触を実現することが効果的です。
インターンシップを実施する
採用直結型インターンシップの制度化により、今後はインターンシップが採用戦略の中核となることが予想されます。
従来、学業への影響を理由に採用直結は禁止されていましたが、25卒以降は取得した学生情報を広報・採用活動に活用可能となりました。
さらに、「もっとも志望度が上がったコンテンツ」として夏インターンを挙げる学生が最も多く、実施の重要性は年々高まっています。早期の認知獲得とマッチング精度の向上を目的に、戦略的に設計することが求められます。
採用広報チャネルの見直し
学生の情報接点が多様化する中で、ナビサイトだけに依存しない広報設計が必要です。SNS、逆求人サービス、口コミサイトなど、学生の情報収集経路は年々広がっています。
とくに、「自社をまだ知らない潜在層」や「関心が低い準顕在層」に向けて、複数チャネルで接点をつくる仕組みが重要です。一方で、単に接点を増やすだけでは不十分で、応募から内定までの歩留まりを意識した導線設計も欠かせません。
エントリー数減少の傾向を踏まえ、多様な広報チャネルの拡大と最適化を図ることが効果的です。
内定後のフォローによる歩留まり改善
採用活動では「出会うまで」だけでなく、「出会ってから辞退されない」ための施策も重要です。
採用フローにおける歩留まりとは、書類選考や面接などの各段階で次に進んだ候補者の割合を指します。
辞退を防ぐためには、求める人物像の明確化や社員との交流機会の提供が効果的です。また、内定後のフォローとして定期的なコミュニケーションや内定者イベントを実施することで、志望度維持・向上につながります。
採用戦略の見直し
採用市場の変化は毎年起きており、一度立てた採用戦略を固定化せず、定期的に見直すことが欠かせません。
学生の価値観や就活トレンドが変化する中で、最新データをもとに戦略をアップデートし続けることが、27卒以降の採用を成功させる最大の鍵となります。
おわりに
本記事では、市場データをもとに、新卒採用市場の動向やトレンド、2027年卒以降の新卒採用市場の攻略ポイントについて解説してきました。
変化を続ける新卒採用市場において、市場動向を分析し、分析結果をもとに企業にあった採用計画を立てることが非常に重要です。
本記事で紹介した学生の指向や攻略ポイントを理解し、自社の採用計画を見直すことで、2027年卒以降の採用活動を成功させましょう。

